論文ID: JOSH-2022-0032-JI
現在,リスクアセスメントによる労働災害防止対策の推進が図られているが,中小規模の事業場での取り組みは十分とは言えない.そこで,本研究では,機械災害を対象に,中小規模の事業場でのRAを支援する方策の一つとして,RAの中でも最も重要なステップとされる「危険源の同定」に焦点を当て,その簡易化と具体的な支援手段の例を提案する.具体的には,これまで危険源の同定で一般的に利用されてきた危険源リストを,機械の使用中に発生する労働災害をよりイメージしやすいよう,機械災害事例の分析結果から作成したイラストで再構築し,実施者に危険源が災害に至る過程を可視化情報として提示することで簡易化を図る.さらに,この簡易化した危険源同定の手順に基づき,中小規模の事業場での実施を支援する手段例としてタブレットPC上で動作するアプリケーションソフトウェアを試作した.これを用いて典型的な機械を対象に危険源同定を試行する方法で,中小規模製造業事業場3社の安全担当者により,提案する簡易化危険源同定の有効性を検証した結果,有効な支援となり得るとの評価を受けたので報告する.