「肩こり」はプレゼンティーズムに関連する労働生産性損失額が最も大きい健康問題である.本調査報告では,この問題に対する「ヘルスキーパーによるあん摩指圧療法」の有効性を検証した.
対象は,肩こりにより労働生産性が低下していると自覚している者で,積極介入群(週1回以上介入を受ける),通常介入群(従業員の都合で介入を受ける),無処置対照群のいずれかに無作為に割り付けた.介入は1回20分程度のあん摩指圧療法で,あん摩マッサージ指圧師の免許を有するヘルスキーパー2名が行った.主要評価項目は過去3か月間における肩こりによる労働生産性損失額の変化量(3か月間の試験期間終了時-開始時)とした.
基準を満たした32例を積極介入群13例,通常介入群9例,対照群10例に割り付けた.介入を受けた回数(平均±標準偏差)は積極介入群11.92±3.12回,通常介入群6.22±3.38回であった.労働生産性損失額の変化量(中央値)は,対照群が36,170円増加したのに対し,通常介入群では3,065円減少し(p=0.385),積極介入群では33,565円減少した(p=0.016).
以上により,肩こりによる労働生産性の低下を自覚しているオフィスワーカーに対して,ヘルスキーパーによるあん摩指圧療法を1回20分程度,週1回以上受けるよう指導することで,無処置対照と比較して労働生産性の損失額を減らせる可能性が示された.
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