労働安全衛生研究
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早期公開論文
早期公開論文の7件中1~7を表示しています
  • 西脇 洋佑
    原稿種別: 原著論文
    論文ID: JOSH-2024-0011-GE
    発行日: 2025/02/14
    [早期公開] 公開日: 2025/02/14
    ジャーナル フリー 早期公開

    空気との反応による化学物質の蓄熱(自己発熱)の危険性について,一般には自然対流や一定の流速での条件で測定されるものの,実際の化学物質の貯蔵・利用環境では気象や空調,乾燥塔の設定などの影響を受け,幅広い空気の流動条件が考えられる.化学物質周辺の空気の流れる速度(流速)の上昇は酸素ガス等の反応物の供給量の増大を意味し,発火の危険性を増大させる一方,過度の空気の供給は冷却効果をもたらし,発火の危険性を低減することが考えられ,これらの影響を十分に考慮せずに蓄熱による発火の危険性評価を実施した場合,危険性を過小・過大評価する恐れがある.本研究では活性炭をモデル物質として,流速の制御が可能な小型のワイヤーバスケット試験装置としてグレーバ炉を利用することで空気流動の影響の評価が可能な等温条件での自己発熱性試験を実施可能であるか検討し,また活性炭の蓄熱発火危険性における流速の影響の調査を行った.調査の結果,グレーバ炉の通常の測定法である昇温条件での試験においても流速変更に伴う発火温度の変化が見られ,さらに,昇温条件での結果を基に設定した等温条件でのグレーバ炉を用いた試験結果より,流速の上昇に伴う酸素供給量の増大による自然発火温度低下と,過度の流速の上昇がもたらす冷却効果による自然発火温度上昇をそれぞれ確認することができた.

  • 小林 健一, 大谷 勝己
    原稿種別: 資料
    論文ID: JOSH-2023-0019-SHI
    発行日: 2025/02/08
    [早期公開] 公開日: 2025/02/08
    ジャーナル フリー 早期公開

    経済協力開発機構(Organization for Economic Co-operation and Development, OECD)は国際的な化学物質管理にあたって,優良試験所基準(Good laboratory practice, GLP)やデータの相互受入(Mutual acceptance of data, MAD)システムを導入している.このシステムの導入により,試験内容の重複,試験に供される実験動物の削減及び貿易上の非関税障壁を回避するための化学物質リスクに関する情報収集および評価のフレームワークの開発を推し進めている.本稿ではそれらに関連して,OECDが行う化学物質管理の査察当局への査察現地評価(On-site evaluation visit, OSEV)制度の成り立ち,GLP査察官のためのトレーニングコース(OECD training course for GLP inspectors)及びメンバーとして参加したWorkplace chemicalsに関するOSEVに至る概要を述べる.

  • -探索的ランダム化比較試験-
    松坂 英紀, 大森 直, 藤澤 由香, 皆川 陽一, 村田 亜紀子, 木下 修文, 和田 朋美, 宮崎 彰吾
    原稿種別: 調査報告
    論文ID: JOSH-2024-0005-CHO
    発行日: 2025/02/07
    [早期公開] 公開日: 2025/02/07
    ジャーナル フリー 早期公開

    「肩こり」はプレゼンティーズムに関連する労働生産性損失額が最も大きい健康問題である.本調査報告では,この問題に対する「ヘルスキーパーによるあん摩指圧療法」の有効性を検証した.

    対象は,肩こりにより労働生産性が低下していると自覚している者で,積極介入群(週1回以上介入を受ける),通常介入群(従業員の都合で介入を受ける),無処置対照群のいずれかに無作為に割り付けた.介入は1回20分程度のあん摩指圧療法で,あん摩マッサージ指圧師の免許を有するヘルスキーパー2名が行った.主要評価項目は過去3か月間における肩こりによる労働生産性損失額の変化量(3か月間の試験期間終了時-開始時)とした.

    基準を満たした32例を積極介入群13例,通常介入群9例,対照群10例に割り付けた.介入を受けた回数(平均±標準偏差)は積極介入群11.92±3.12回,通常介入群6.22±3.38回であった.労働生産性損失額の変化量(中央値)は,対照群が36,170円増加したのに対し,通常介入群では3,065円減少し(p=0.385),積極介入群では33,565円減少した(p=0.016).

    以上により,肩こりによる労働生産性の低下を自覚しているオフィスワーカーに対して,ヘルスキーパーによるあん摩指圧療法を1回20分程度,週1回以上受けるよう指導することで,無処置対照と比較して労働生産性の損失額を減らせる可能性が示された.

  • -火傷,熱傷の視点から-
    矢吹 陽子, 城内 博
    原稿種別: 調査報告
    論文ID: JOSH-2024-0006-CHO
    発行日: 2025/02/06
    [早期公開] 公開日: 2025/02/06
    ジャーナル フリー 早期公開

    職場における休業4日以上の死傷災害のうち,危険物,有害物等を起因物とする労働災害は年間800件程度発生している.このうち,事故の型が「有害物等との接触」である労働災害の分析結果は厚生労働省において公表されているが,それ以外の事故の型の労働災害の分析結果は公表されておらず,実態が不明であったため,調査,分析を行った.令和2(2020)年から令和4(2022)年において,これらは年間400件弱発生しており,その8割以上が火傷又は熱傷による災害であった.火傷及び熱傷災害の作業別発生状況をみると,調理関係の作業中が最も多く,次いでスプレー缶等のガス抜き時等に多く発生している.また,事業場規模別発生状況をみると,労働者数50人未満の小規模事業場が7割弱を占めている.災害発生事例を踏まえ,災害防止対策例を示した.

  • -全国調査の結果より-
    柴田 陽介, 栗田 泰成, 森下 佳穂, 尾島 俊之
    原稿種別: original article
    論文ID: JOSH-2024-0002-GE
    発行日: 2025/01/15
    [早期公開] 公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー 早期公開

    高校の部活動における部活動指導員および外部指導者の活用状況を明らかにし,顧問教員の健康状態との関連を検討した.全国の高校のすべての顧問教員を対象とした.調査項目は学校(地域,設置,生徒数),部(種目,部員数,部員の性,活動状況,目標),顧問教員(性,年齢,教員免許,教員歴,婚姻,喫煙,飲酒,運動,既往歴,主観的健康感,K6,部活動指導員の活用の有無,外部指導者の活用の有無)の要因とした.解析は部活動指導員および外部指導者を活用している者の割合を算出した.次いで主観的健康感の良さに対する部活動指導員活用ありのオッズ比,K6得点の高さに対する部活動指導員活用ありのオッズ比を算出した.同様に外部指導者活用ありのオッズ比も算出した.7,892人から回答を得た.部活動指導員を活用している顧問教員は7.4%,外部指導者を活用している顧問教員は22.0%であった.オッズ比は,文化部では主観的健康感,K6得点ともに有意な関連が見られなかった.一方,運動部では部活動指導員を活用している顧問教員は健康状態が悪かった(オッズ比(95%信頼区間),主観的健康感(良い/悪い):0.74(0.55-0.98),K6得点(13点以上/4点以下):1.68(1.19-2.37)).部活動指導員は外部指導者より活用が進んでおらず,運動部では外部指導者を活用している顧問教員は健康状態が良いが,部活動指導員を活用している顧問教員は健康状態が悪いことが明らかになった.今後縦断的な研究が望まれる.

  • 鄭 起赫, 崔 光石
    原稿種別: 技術解説
    論文ID: JOSH-2024-0009-GI
    発行日: 2025/01/15
    [早期公開] 公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー 早期公開

    韓国では温暖化政策の影響で2000年以降,電気自動車(登録台数)が年々増加し,2023年には543,900台になっている.一方,それに伴い電気自動車における火災も増加傾向で2023年は1万台当たり1.32件である.本報では主に韓国における電気自動車の重篤火災事故事例と電気自動車の市場および火災統計,消火方法について紹介する.現状では,電気自動車の火災リスクを完全に制御することは難しいが,バッテリー充電器の制御システムや電気自動車専用の消火装置の研究や開発が引き続き重要である.

  • -業種・従業員規模・時間外労働時間に着目して-
    高田 琢弘, 加島 遼平, 王 薈琳, 小林 秀行, 佐々木 毅, 高橋 正也
    原稿種別: 調査報告
    論文ID: JOSH-2024-0004-CHO
    発行日: 2024/12/29
    [早期公開] 公開日: 2024/12/29
    ジャーナル フリー 早期公開

    近年,客観的な労働時間の把握を通した長時間労働削減のための取り組みが進められている.しかしながら,一部では事業場で記録されていた労働時間と実労働時間の間に乖離があることが指摘されている.本研究では,事業場における労働時間把握方法の実態について検討することを目的とした.また,業種・従業員規模・時間外労働との関連についても検討した.無作為に抽出した35,000事業場の安全衛生管理担当者に調査協力依頼を行い,回収した3,587事業場の回答データを分析対象とした(回収率:10.2%).分析の結果,“タイムカード,ICカード”による労働時間把握を行っている事業場が約7割であり,客観的な労働時間把握方法を用いていない事業場が約2割であった.また,客観的な方法による把握の割合が“製造業”や“卸売業,小売業”で高いなど,業種ごとに傾向が異なっていたことが示された.さらに,客観的な方法による把握の割合は従業員規模が“10~29人”の事業場で低く,客観的な方法による把握の割合が高い事業場では“80時間超100時間以下”の時間外労働を行っている労働者が少ない可能性が示された.これらの結果を踏まえ,労働時間の把握状況の実態とその影響について解明していくことが求められる.

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