本研究では,和歌山県内の事業場における,労働安全衛生法令改正に伴う化学物質管理に係る取り組み状況を明らかにすることを目的とした.
和歌山産業保健総合支援センターの事業場リストのうち781事業場を対象に,無記名の質問票を郵送により配布した.質問票は,事業場の概要,ラベル表示・Safety Data Sheet(SDS)交付・リスクアセスメント実施の対象物質の取り扱い,リスクアセスメント対象物健康診断の実施状況などとした.
化学物質を取り扱っている155事業場を分析対象とした(有効回答率19.8%).小規模(労働者数が50人未満の83事業場)で,労働安全衛生法令等の改正を知っている事業場は36.1%であった.ラベル表示・SDSに基づいた衛生教育や内容物の明示,化学物質のリスクアセスメントを行っている事業場は小規模で有意に少なかった.また,小規模で定期的にリスクアセスメント対象物健康診断を実施している事業場は7割に満たず,事後措置を行っている事業場も約半数であった.さらに,労働者の雇い入れ時に安全衛生教育を行っている事業場,化学物質管理者・保護具着用管理責任者の選定を予定している事業場も小規模で有意に少なかった.
小規模事業場において,化学物質に関する情報伝達システムの構築や,リスクアセスメント対象物健康診断の実施促進,安全衛生教育体制の整備などの支援が必要である.
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