2023 年 43 巻 3 号 p. 85-92
コロナ禍の影響で1年延期された第32回夏季オリンピック競技大会は,約半世紀ぶりの自国での夏季大会開催であり,参加者だけでなく,国内の感染拡大にも配慮が求められた.実質的な感染対策は各競技団体(NF)の医事組織と強化部門の連携が重要であり,選手団としては大会直前まで更新されたガイドラインへの対応を要した.自国開催は追い風になると期待されたが,移動の制限や予定変更を強いられる事例もあり,さらにはバブル形成への対応などでその利点が十分に活かせなかった部分もあった.しかしながら,前例のない制約の中でも無事に大会を終了できたことは,今後の「安全な総合競技大会の運営と参加」という点では意義があったと思われる.