2021 年 40 巻 6 号 p. 820-826
医療観察法病棟において,実父との拡大自殺を試みたうつ病と回避性パーソナリティ障害の対象者に関わる機会を得た.本介入では,対象者が強い関心を示した革細工を具体的なルールの下で導入したことが契機となり,専門的多職種チーム(MDT)による対象者の社会復帰に向けた治療が進展した.医療観察法において,うつ病とパーソナリティ障害が併存する対象者に作業療法士が関わることによって,対象者の価値を置く作業が見出されること,その具体的な作業体験のなかで対象者が有するパーソナリティ障害の行動特性を顕在化させること,明確なルールの下で作業を提供することによって安全に対象者の行動変容を促せることが可能になると考えられた.