作業療法
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巻頭言
  • 小川 真寛
    2026 年45 巻1 号 p. 1
    発行日: 2026/02/15
    公開日: 2026/02/15
    ジャーナル オープンアクセス

    数年前に「作業療法リーズニングの教科書」というタイトルの書籍を執筆,編集させてもらった.その時に,作業療法の臨床実践のリーズニング,つまり臨床の思考過程について,改めて学んだ.そこで,現場で「リーズニングが大事」などと軽々しく言っていた自分が恥ずかしくなるくらいにリーズニングが分かっていなかったという事実に気がついた.自分の思考過程が整理できた瞬間で,ハッとする経験だった.そこから学びを深めると,臨床家としてのリーズニングに熟達していくプロセスもあることもわかり,自分自身のOTとしてのリーズニングの成長を振り返る思いがけない学びとなった.

学術部報告
原著論文
  • 山本 恵利香, 田原 正俊, 長田 佳奈, 高橋 香代子
    2026 年45 巻1 号 p. 6-14
    発行日: 2026/02/15
    公開日: 2026/02/15
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究の目的は,Grade-4/5MALの日本語版を作成し,脳卒中後の片麻痺患者を対象に信頼性と妥当性を検討した.翻訳はガイドラインに準じて行った.信頼性と妥当性の検討は,片麻痺患者53名を対象として実施し,検者間信頼性・検者内信頼性・再検査信頼性,内的一貫性いずれも高い信頼性を認めた.また,基準関連妥当性は,MAL-14と高い相関を認めた.構成概念妥当性は,FMA(下位項目の各小計,合計点),ARAT(下位項目の各小計,合計点),FIM運動項目と有意なかなり強い相関を認めた.日本語版Grade-4/5MALは,麻痺側上肢のADLでの使用を促す評価ツールとして,臨床での活用に期待ができる.

  • ─半構造化面接による質的分析─
    加納 裕遵, 筧 智裕, 小林 竜, 五味 幸寛
    2026 年45 巻1 号 p. 15-22
    発行日: 2026/02/15
    公開日: 2026/02/15
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究の目的は,地域在住高齢者の家庭内役割に対する認識を明らかにすることである.要介護認定が非該当であり,日常生活活動が自立している地域在住高齢者5名に対し,家庭内役割の認識に関する半構造化面接を行い,質的データ分析法を行った.その結果,最終コードとして【家族との相互関係における貢献意識】【日常生活における役割の継続性と習慣性】【役割に対する個人の価値観とその変化】【役割遂行に伴う感情の二面性】を抽出した.これらの4つの視点を踏まえながら家庭内役割を捉え,役割の継続に向けた具体的な方略を検討することが重要であると考える.

  • ─Step for Coding and Theorization(SCAT)を用いた分析─
    西岡 貴人, 町尻 拓真, 花田 智仁, 齋藤 佑樹
    2026 年45 巻1 号 p. 23-31
    発行日: 2026/02/15
    公開日: 2026/02/15
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は,回復期リハビリテーション病棟の作業療法士(以下,OT)が協働的な目標設定に向けた面接評価時に抱く苦手意識を明らかにすることを目的とした.13名のOTを対象にフォーカス・グループ・ディスカッション(FGD)を実施し,Steps for Coding and Theorization(SCAT)を用いて分析した.結果,OTは,面接評価実施時期の判断や面接評価についての知識と技術,そして多様な状態の対象者に対する面接方法やツールの柔軟な活用に苦手意識を抱いていることが明らかになった.これらの知見は,面接評価の質を高めるための研修や教育プログラムを再考する上での一助となるものである.

  • ─事例-コード・マトリックスによる分析を通して─
    白木 望, 齋藤 佑樹
    2026 年45 巻1 号 p. 32-40
    発行日: 2026/02/15
    公開日: 2026/02/15
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究の目的は,身体障害領域及び老年期領域に勤務する若手作業療法士(以下,若手OT)が初回面接評価時に経験する困難感を明らかにすることである.12名の若手OTにインタビューを行い事例─コード・マトリックスに準拠して分析を行った.結果,30のコードと4つのカテゴリが生成された.全体の特徴として,「対象者の特性」「OTの技術」「OTの心理的要因」「環境要因」が挙げられた.個別特性については,領域別では急性期と回復期,経験年数別では1〜2年目と3〜4年目において異なるカテゴリが高い出現頻度を示した.本研究結果は慎重に解釈する必要があるが,具体的な自己研鑽の方法や,組織の教育システムの構築に貢献する可能性がある.

  • ─SCATを用いたデプス・インタビューの分析を通して─
    吉田 尚樹, 齋藤 佑樹
    2026 年45 巻1 号 p. 41-49
    発行日: 2026/02/15
    公開日: 2026/02/15
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究目的は,重症心身障害児を対象に作業に焦点を当てた目標設定を行う作業療法士(以下,OT)のプロセスと背景基盤を検証することであった.5名のOTにデプス・インタビューを実施し,Steps for Coding and Theorization(SCAT)で分析した.結果,目標設定プロセスにおいて,家族との対話や作業遂行観察を通じた段階的な合意形成を重視していた.その背景には,人間作業モデルや作業科学の理論枠組み,カナダ作業遂行測定の評価学習経験が影響していた.本研究は,作業に焦点を当てた目標設定の基盤を明らかにし,臨床実践や教育の向上に貢献する知見を提供した.

  • ─地域在住高齢者を対象とした横断研究─
    栗田 洋平, 泉 良太, 鈴木 達也, 佐野 哲也, 青柳 翔太, 佐竹 祐輝
    2026 年45 巻1 号 p. 50-57
    発行日: 2026/02/15
    公開日: 2026/02/15
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究の目的は,地域在住高齢者のうつ傾向の有無と作業参加の関連を明らかにし,老年期うつの予防・改善に向けたプログラム開発の一助とすることである.212名の対象者(うつ傾向群28名,非うつ傾向群184名)に対し調査を実施し,二項ロジスティック回帰分析の結果,うつ傾向の有無に関連する因子として,SOPI総得点(オッズ比0.92)が抽出された(p<0.05).作業参加が不足していることは,高齢者のうつ傾向を促進する可能性がある.作業療法士は,作業参加改善のアプローチを実施することで,地域在住高齢者のうつ傾向の軽減を図ることが期待される.

  • 佐々木 智也, 石橋 裕, 井上 俊輔, 尾下 真志
    2026 年45 巻1 号 p. 58-67
    発行日: 2026/02/15
    公開日: 2026/02/15
    ジャーナル オープンアクセス

    家族介護者において介護負担感および生活満足度による1日の過ごし方やその認識の違いを明らかにすることを目的として,地域在住の要介護高齢者を介護する高齢の家族介護者82名を対象に横断的調査を行った.介護負担感および生活満足度から対象者を4群に群分けし,1日の過ごし方と活動の自己認識を比較した.結果,介護負担感と生活満足度が共に低い「低負担・低満足群」が一定数含まれ,介護負担感および生活満足度と価値や興味などの意味付けられた活動の有無に関連が見られた.家族介護者への支援において,介護負担感は軽度でも作業に問題を抱えている可能性を考慮する必要があり,価値や興味など活動の自己認識の重要性が示唆された.

  • 小野 健一, 金山 祐里
    2026 年45 巻1 号 p. 68-76
    発行日: 2026/02/15
    公開日: 2026/02/15
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】訪問作業療法における共作業に求められる身体性・情緒性・志向性を確認する.【方法】訪問作業療法に従事し,家族介護者支援の経験がある作業療法士に対し,訪問作業療法において共作業の支援に求められる身体性・情緒性・志向性領域の項目を,要介護者・家族介護者への必要度と訪問作業療法における必要度の観点で回答を求めた.結果はデルファイ法にて分析した.【結果】要介護者では身体性領域12項目,情緒性領域15項目,志向性領域28項目,家族介護者では身体性領域7項目,情緒性領域14項目,志向性領域32項目を確認できた.【結論】今回明らかになった共作業の要素をふまえ,家族介護者を含めた生活支援を行う必要がある.

実践報告
  • 〜回復期リハビリテーション病棟における脳卒中患者の一事例〜
    小山 貴士, 大野 勘太
    2026 年45 巻1 号 p. 77-84
    発行日: 2026/02/15
    公開日: 2026/02/15
    ジャーナル オープンアクセス

    本報告では,作業療法における患者の意思決定嗜好性をControl Preference Scale (CPS)を用いて評価し,その変遷に応じて介入方針を調整した事例を示す.CPSの活用により,作業療法の介入方針への患者参画の程度を柔軟に調整し,Interprofessional Shared Decision Makingの理念に基づく多職種協業を通じて,患者中心の作業療法の実践が促進された.本事例は,嗜好性に基づく意思決定支援が,患者中心の作業療法実践と多職種連携において有効である可能性を示唆している.今後,嗜好性評価を活用した支援の有用性を検証し,他領域への応用を検討することが求められる.

  • 川村 明代, 林 良太, 戸井 優樹
    2026 年45 巻1 号 p. 85-91
    発行日: 2026/02/15
    公開日: 2026/02/15
    ジャーナル オープンアクセス

    家族を亡くした喪失感と生活への不安から抑うつ状態となり,援助希求行動が取れず自殺企図に至ったうつ病患者に関わる機会を得た.うつ病患者に特徴的な思考の歪みに気づくこと,問題が持続した場合に援助希求行動が取れることを目標に,うつ病のためのメタ認知トレーニング(D-MCT)と精神科作業療法(OT)を実施した.9週間の介入の結果,D-MCTを通して思考の歪みに気付き,OTを通して気分の安定,自尊心の向上が見られた.特に思考の歪みの気付きと自尊心の向上は相乗的に影響を与え,援助希求行動に繋がったため報告する.

  • ─代替移動手段の獲得後も作業機能障害が発生する可能性を示した事例─
    恩田 真也, 竹原 崇登, 吉原 理美
    2026 年45 巻1 号 p. 92-99
    発行日: 2026/02/15
    公開日: 2026/02/15
    ジャーナル オープンアクセス

    脳損傷者に対する自動車運転再開支援では,医療者が運転再開を支援する立場であるが,他方で医療者が運転再開を制限する可能性もある.今回,外来作業療法において脳損傷者の運転再開支援を行った.結果,運転再開が困難と判断したが,並行して代替となる移動手段の支援を行ったため外出は自立した.しかし,自動車運転ができないことによる作業剥奪を起因とした作業機能障害が発生する可能性を示した.結論,運転再開希望者に対しての作業療法では,運転再開支援と代替となる移動支援だけでなく,作業機能障害に焦点を当てた評価と介入を実施する必要性が示唆された.

  • ─単一事例実験研究─
    間宮 美春, 渡邊 愛記, 川口 敬之, 松岡 耕史
    2026 年45 巻1 号 p. 100-106
    発行日: 2026/02/15
    公開日: 2026/02/15
    ジャーナル オープンアクセス

    意思決定が困難な認知症高齢者に対し,「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン」に基づく作業活動の意思決定と協業を促すための実践プロトコルを作成した.この実践プロトコルに基づき,認知症のある人が作業活動を主体的に選択し,作業療法士とともに遂行状況を振り返ることによる介入の効果を,単一事例実験研究にて検証した.結果,作業活動に対する主観的な遂行度と満足度が改善し,病棟での自発的な発言や他者とのコミュニケーションの増加がみられた.本実践プロトコルは,認知症のある人の意思決定能力を最大限に活かし,作業活動に主体的に取り組み成功体験を得ることによる主観的評価の改善に有効であった.

  • ─シングルケーススタディ─
    猪股 英輔, 坂本 俊夫, 五嶋 裕子, 齋藤 久恵, 平野 夏子
    2026 年45 巻1 号 p. 107-114
    発行日: 2026/02/15
    公開日: 2026/02/15
    ジャーナル オープンアクセス

    認知症高齢者に色カルタ・クオリアゲーム®を笑顔なし(A期)と笑顔あり(B期)で実施したときの影響を笑顔の表出と社会的交流技能を指標としたシングルケーススタディ(ABABデザイン)により検証した.笑顔の表出は1A期に比べ1B期で有意に増加したが,2B期では有意な増加は認められなかった.一方,社会的交流技能は1A期・2A期に比べ1B期・2B期ともに有意に増加した.結果の要因には,情動的共感と認知的共感が関与すると推察した.肯定的態度の笑顔で実施する色カルタは,対象者の笑顔を増やすだけでなく,社会的交流の促進につながり,活動の効果に影響することが示唆された.

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