今回,上位頚髄後索に多発性硬化症を再発し,利き手である右上肢の表在および深部感覚が脱失した症例を経験した.症例の感覚障害は免疫吸着療法で改善したが,治療経過において静的2点識別覚や立体覚の障害を認め,手指の巧緻動作が拙劣となるUseless hand syndromeを呈していた.作業療法では,手の機能を細分化した能動的な感覚再学習と,実生活に汎化を促す介入を実施した.治療効果に合わせて,感覚障害に対するアプローチを行うことで,免疫吸着療法開始3週間で,スムーズに実用的な右上肢機能を再獲得することができたと考えられた.