抄録
従来,都市農業は,計画的撤退の対象と捉えられることが多く,計画的保全の対象と捉えられることが少なかった.しかし近年,自然・歴史資源の活用が都市計画の主要課題として取り上げられるに至り,都市農業は都市部の自然・歴史資源の一つとしてその活用が注目されている.具体的には,都市農業は周辺住民に「安全・安心」な食料や微気象緩和・保健休養など居住環境形成に資する働きの供給源としての活用が期待される.また,物質循環型社会の主要な担い手としての活用も期待される.上記の点から都市農業を活用するためには,周辺の都市住民と関わる農業活動の展開が必要である.本発表では,都市住民と関わる農業活動に対する農家の対応を明らかにした.結果は以下のようにまとめられる.(1)半数以上の農家が都市住民と関わる農業活動を行っていた.(2)都市住民と関わる農業活動に熱心な農家は,農業経営に優れた農家が多い.(3)対象地域内の自治体は,都市住民と関わる農業活動を行う農家の割合から3類型に分けられた.