抄録
本研究は、漁港に関する学術的論述が規定した漁港の定義、配置方法、空間構成の分析を通じて、漁港法成立前の漁港論がどのように編成されていたかを明らかにする。結論は以下の4点である。1.漁港は、広義には漁業専用港、狭義には同様の港の中で高い漁業生産能力を持つものとされた。2.漁港建設地には、漁場への近さ、消費地との間の交通機関の存在、広く深く静穏な水域、広い平地といった自然条件が必要とされた。3.必要な設備として碇泊地、魚市場等が言及され、それら諸設備の連絡関係、機能的分割配置、形態等が規定された。4.漁港論は、漁場と消費地を上記の諸条件を満たす漁港により接続する水産業の空間システムを定式化した。