抄録
本研究は,横浜震災復興計画における台湾市区改正の影響の可能性について,牧彦七の活動という側面から検討した。牧の横浜震災復興計画は逍遥道路という遊歩道を特徴とし,牧が土木技術者としての最初の実務を経験した台北でも,遊歩道が計画されていた。本研究では,横浜と台北の遊歩道計画の類似性を指摘すると共に,牧が台北市区計画委員に任命されていた事実を発掘した。このように,牧彦七は横浜に先立ち,台湾で市区計画に関与した可能性が高いため,台北市区改正における牧の計画経験が横浜震災復興計画(牧案)の策定において作用した可能性を検討する必要があると結論した。