抄録
東京都大田区田園調布地区は、資産家が多く居住する郊外住宅地である。そのため、資産価値上昇のために進んで街並み維持につながる建築行為が実施されていると考えられる。これに対し本論文では、田園調布地区において他者の貢献による街並みは借景とし自らは街並みを維持しない新規の建築行為が多く存在していることから、田園調布地区が潜在的に社会的ジレンマ状況にあることを確認した。また、住民自ら私的協定を締結し協定違反行為をコントロールするために段階的仕組みを工夫するとともに、違反者の協力性向に応じた説得の方法を採用していることを明らかにした。これらの取り組みにより、田園調布地区の街並みはシステム崩壊直前でなんとか維持されていると考えられる。