2005 年 40.3 巻 p. 37-42
人口減少時代を迎え、その中でサステイナビリティの改善が求められる状況下では、都市コンパクト化のような都市構造の改変だけで有効な方策を打ち出すことが難しくなっている。最新のモデル的検討では、郊外居住者の行動変容を伴わない限り環境負荷の低減には繋がらないことが試算されている。つまり個人の交通行動を把握するためには、地区側の条件だけでなくその個人がそもそもどのような行動特性を有するかという観点からの検討が求められている。しかし、わが国の都市居住者のもたらす交通環境負荷が、地区側、および個人側条件をクロスして見た場合、実際どんな値を示しているのかという最も基礎的な情報はまだ整理されていない。そこで本研究では、わが国の地方中心都市全体を対象とし、自動車依存特性を個人属性(行動タイプ)及び地区属性(住宅地タイプ)の両面から実際の数値として整理する。その結果、環境負荷に与える影響は住宅地タイプの違いよりもむしろ行動タイプに依存しており、個人の行動は居住する地区のタイプを変化させるだけでは簡単に転換できるものではなく、個人の属性を考慮し行動変化を促す施策が必要であることを明らかにすることができた。