2005 年 40.3 巻 p. 427-432
近年、建物高さを巡るマンション紛争などを背景に法的な強制力のある高さ規制の必要性が増している。高さ規制は財産権への影響も大きいためにその内容に正当性や合理性が要求される。本研究では、絶対高さ制限による高度地区を事例に高さ制限の正当性を考察した。本研究では高さ制限の正当性を、 1.高さ制限指定の必要性、2.高さ制限の技術基準の合理性、3.手続きの適切性の三つによって確保されると定義した。その結果、指定の必要性は上位計画よりマンション問題に依存する傾向が強かった。また、技術基準の合理性については、上位計画での位置づけや具体的な設定理由、継続的な取組みなどの合理的な説明があれば、経済的 (法定容積率 )負担が大きい制限値が可能となることが確かめられた。その一方で、制限値は現況の建物高さや利用容積率の状況と比べて大きく、新たなマンション紛争が起きる可能性があることから、目的を達成しうる適切な基準値の検討が求められる。また、住民意向を高さ制限の実施や内容に反映させる手法は、高さ制限の正当性を持たせる上で重要であることが確かめられた。