抄録
大阪・船場は太閤下水跡に存在する背割り空間や路地、船場後退建築線による歩道状空地、総合設計制度による公開空地等、私有敷地内に様々なバリエーションの空地が点在している特徴を持ち、都市空間の魅力を生み出す場所となる可能性がある。しかし、詳細には把握されていないため、本研究では私有敷地内空間で構成されるパブリックスペースに着目し、中でも複数の私有敷地によって生み出されるつながった空間は、その連続性や広がりから、都市空間の魅力に大きな影響があると考えられるため、それらの実態とつながりを明らかにすることを研究の目的とした。船場には誰もが入れて利用できる空間は多く存在するが、つながりを絶つ要因があるためにつながった空間は全体の 6.0%であった。また、船場後退建築線の指定などの様々な制度によりつながった空間は近年増加する傾向にある。しかし、その多くは都市空間の魅力を生み出す場所ではなく、歩行利用のみがなされる空間であった。船場は、地区によってその特性は大きく異なる。そこで、各地域の特性を踏まえた計画づくりと地域住民等との合意形成によるルールづくりが重要であろう。