抄録
東京都中央区はこれまで先駆的に多様な都心居住施策を展開してきた基礎自治体であるが、本研究はそれらの諸効果を検証するための研究の一環として、平成5年に用途別容積型地区計画が施行され、平成9年に街並み誘導型地区計画が追加施行された第2ゾーンを対象として、それらによる住宅供給の誘導効果を考察することを目的とする。本研究での分析を通じて、以下の3点が明らかになった。第一に、用途別容積型地区計画が施行された平成5年から併用型地区計画が施行される前の平成8年までの4年間において、用途別容積型地区計画による住宅供給の誘導効果は限定的なものであった。第二に、平成9年に施行された併用型地区計画は、道路斜線制限等の緩和によって共同住宅の供給促進に大きな効果を発揮した。しかし第三に、併用型地区計画の施行後に供給された共同住宅のストックとしての質は、延べ面積と階高の点からみて必ずしも高いとは言えない。