2006 年 41.3 巻 p. 713-718
本研究論文は、1990年代後半以降のスウェーデンにおけるカウンティの合併・再編と「レジオン実験」を取り上げ、広域レベルの行政体系が大きく変化することとなった背景・要因の分析を行うとともに、レジオン実験の状況の分析、実験内容の評価、さらには実験結果を踏まえた今後の広域レベルの行政体系のあり方について考察を加えることを目的とする。主な結論は次のとおりである。1.「レジオン実験」の実施に至る背景には、民意を反映した地域政策担当組織の不在、EUのニーズに戦略的に対応できる効率的な行政システムの欠如、という2つの課題があった。2.これまでの「レジオン実験」の成果として、従来、地方行政局が実施していた地域政策に関する事務を「地域自治組織」が行うことにより、地域レベルの関係主体間の連携が強化されるなど、民主性の向上について一定の成果が認められる。一方、実験の結果として、EUのニーズに戦略的に対応できる効率的な行政システムを構築できるかどうかについては、現時点では明確でないと考えられる。