抄録
本論文は、都市計画行政が旧軍用地の転活用にどのように関わり、転活用結果が戦後の都市構造再編にどのような影響を与えたかを明らかにすることを目的とする。具体的には、名古屋市の4地区の旧軍用地を対象に、戦災復興計画における計画意図、転活用に至る経緯、現在までの経過を整理し、都市構造再編に与えた影響を考察した。事例の旧軍用地は、公園・墓苑、官庁街、文教・住宅地市街地、産業拠点として、都市施設整備の受け皿となり、都市構造再編に直接的な影響を与えたとともに、復興土地区画整理事業促進のための墓地移転や大学の集約移転まで暫定利用され、都市構造再編に間接的な影響を与えた。さらに、旧軍用地が都市計画的見地から位置づけられたこと、暫定利用が見られたこと、都市計画的配慮が転活用後の空間の質を高めたこと、部分的利用の集合により計画性のない市街地が形成されたこと、転活用は公的利用が中心であったことが指摘できる。