抄録
2006年4月に開業した富山ライトレールは、わが国初の本格的なLRT路線として注目されているが、このプロジェクトの意義は、新しい交通システムの開業ということにとどまらず、わが国のこれからの公共交通のあり方や、交通政策と都市政策の関連などの面から多くの新しい方向性を提示していることにあると考えられる。本研究では、このプロジェクトの基本的な考え方とその特徴を分析し、それらが一般的な地方都市の公共交通におけるこれまでの考え方とは異なる視点を提示したことを示すとともに、交通政策・都市政策的視点からの意義を明らかにした。具体的には、赤字ローカル路線の利便性を画期的に向上させたこと、都市のコンパクト化を事業の意義として明確に位置づけてその費用を公的に負担していることなど、都市政策と公共交通政策の連携の視点から大きな変革をもたらしつつあることが重要であることを示した。