抄録
本研究は2001年に発生したワールドトレードセンター同時多発テロ後の再建を対象として、再建に向けての討議型の計画策定プロセス、中間支援組織の役割、そして空間変容を明らかにしたものである。災害後に設立されたロウアーマンハッタン開発公社(LMDC)が港湾公社やニューヨーク州・市、市民団体、専門家による支援団体、市民、遺族などの多様な主体の利害や再建に向けての想いをどのように調整し、それらがどの程度実際の計画に反映されたかを分析している。再建における討議型都市計画を実質的にリードしたのはその役割が設立当初から期待されたLMDCというよりも、中間支援組織であった。再建プロセスを牽引するのに加えて中間支援組織が果たしたもう一つの役割は、LMDCが提示する再建への主原則や青写真・計画案に対する助言、そしてWTC敷地に留まらない大きな視野でみたロウアーマンハッタン地区が目指すべき将来像の検討を行った。複数の中間支援組織が異なるアプローチで空間形成への具体的な提案し、これに数多くの市民の再建へ向けての夢や想いと融合することによって、再建計画の総合性、広域性を大きくすることにつながったことを明らかにした。