抄録
今日の都市開発事業は、公民連携を基本として、民間事業者主導により事業推進が図られている。しかし、利益追求を優先する民間事業者の本質と昨今の規制緩和の流れに対し、景観問題・地区全体の一体性の欠如等による社会性の欠如という問題を生じさせている。また、人々の都市に対する要求が多様化・高次化する中で高いアメニティ性や社会性が求められている。このような流れの中に、CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)の概念が有効であることが各所で述べられているが、都市開発事業におけるCSRに関し具体的に論じられたことはない。そこで、都市開発事業におけるCSRとは如何なるものなのかを論じ、現状で見られる都市開発事業におけるCSRへの民間事業者の行動と公共セクターの関わり方を整理する。その上で、都市開発事業におけるCSRの課題を抽出し、都市開発事業におけるCSRの取組みを行うにあたっての民間事業者の行動と公共セクターの関わり方の今後の方向性を提示する。