抄録
トルコ共和国は1923年の建国以来、西洋を規範とした新しい制度や技術を導入して、旧来の体制を一新しようと試みる。そうした近代化政策の一環として、新しい国家像を象徴する新首都アンカラの建設が行われた。本研究はアンカラ新首都建設に際し西洋の専門家によって計画案、実施案の作成が行われた1924年から1932年までを対象として、当時の文献から都市計画案の詳細および計画案を実行に移すまでの過程を把握し、トルコ共和国の近代化におけるアンカラ新首都建設の意義について考察することを目的とするものである。近代都市計画技術を受容することによって近代的な都市空間が整備されたが、旧来の都市構造の一部は取り残された。旧市街を凍結保存せざるを得なかった点で本来の目的である空間の刷新を完全に達成することは出来なかったものの、アンカラ新首都建設を通じて近代的行政機構の組織や都市管理制度といった社会的諸制度の近代化が成し遂げられたことを明らかにした。