抄録
防犯まちづくりが各地で急速に推進されるなか、それに対する批判的な言説も発表されるようになってきた。防犯まちづくりが今後もまちづくりの一種として定着していくためには、こうした批判論とも向き合いつつ、その考え方を再構築することが求められる。本研究では、既存の学術雑誌や評論誌のレビューをもとに、わが国の防犯まちづくりへの批判論を体系的に整理すること、アンケートの分析をもとに、批判論に対する一般市民の態度を明らかにすることを目的とした。まず、121の文献から抽出された142の批判論を分類した結果、それらは 3つの大カテゴリのもとで、「警察国家論」、「監視社会論」、「要塞都市論」などの10の論点で整理された。次に、各論点への賛否を尋ねたアンケートの分析の結果、批判論には、市民の賛同を得ているものとそうでないものがあること、犯罪不安の高まりに伴って、今後賛同を得ることが予測されるものと逆に軽視されるようになっていくものがあることが明らかとなった。今後の防犯まちづくりにおいては、市民の賛同を得る批判論に応えるだけでなく、とくに軽視される批判論に対して一定の配慮が加えられる必要があると考えられた。