抄録
今日、集合住宅は国民の主要な居住形態となっており、これらが地域に根ざした優良なコミュニティを形成することは必要不可欠なことである。そこで本研究では、コミュニティという集団の最小単位としてその境界が明確に規定されている町内会組織を通して、1町内会の組織変化や区割変化といった歴史的変遷を把握し、2集合住宅による単独自治会と従来の町会との実態の差異と両者間の関わりを明らかにした上で、3集合住宅自治会における地域コミュニティ形成のあり方を考察することを目的とし、その結果以下の結論を得た。1.1965年から現在までに町会の変化は少なかったが、多くの集合住宅自治会が町会の範囲内を切り取る形で発足した。2.集合住宅自治会では、集合住宅独自の問題を解決する活動を行っており、一方で多くの集合住宅自治会が周辺町会との連携していた。3.集合住宅では町会の持つ従来の「共同性」とは異質の新たな「共同性」を有しており、集合住宅自治会では自治会活動を通してこの「共同性」を尊重すると共に、町会と連携して活動することで従来の「地域性」の獲得も図るという、地域コミュニティ形成の新たな形の1つを示唆している。