2007 年 42.3 巻 p. 919-924
近年,高齢社会の到来,モータリゼーションの進展,それに伴うバスサービス水準の低下などにより,自動車を利用できる人とできない人との間にいわゆるモビリティギャップが生じている.本研究で対象とする多摩ニュータウン初期開発地区は,近隣住区論に基づく施設配置がなされるとともに,歩行者ネットワークが整備され歩車分離が積極的に図られるなど,居住者の徒歩や自転車での暮らしやすさに配慮して計画的に開発された.しかし,入居開始時の年齢構成の偏りに起因する少子高齢化の中,施設立地の変化やもともと地形の起伏が大きく,坂道や階段が多いことから,これらの交通手段では生活しにくい地区が生じつつあると考えられる.本研究では,日常生活を営む上で重要と思われる活動機会への徒歩・自転車によるアクセシビリティを,年齢などの個人属性や地形の起伏による影響を反映させて定量的に評価する手法を提案した.また,この手法を対象区域に適用し,各住区が持つアクセシビリティの特徴とその要因を考察し,これに人口構成の将来推計を加味することにより,今後の高齢化に伴いアクセシビリティの低さが問題化しうる地区について検討できることを示した.