抄録
本研究では中国・西安市において整備に直面している北院門歴史地区を対象とし、アンケート調査に基づき、生活実態と歴史的街路空間の関わり、生活環境満足度とその構造、整備意向等を明らかにすることを目的とする。まず、歴史地区内の中心街路空間は地区住民の多様かつ主要な生活の場として重要な役割を果たしていることを明らかにした。次に、生活環境満足度において、「利便性」が最も分散の大きい評価軸であり、次いで「歴史・コミュニティ」軸、「物的快適性」軸となっており、この3つの軸によって評価空間が形成されていることを実証した。そして、特に、「歴史・コミュニティ」評価において、種々の属性間で有意差があり、地区と関わりが強い程満足度が高いこと、中心街路空間整備に対しては6割以上の住民が保護意向を持っていること等を明らかにした。最後に、以上の結果を踏まえ、北院門地区という歴史的地区内の街路整備の課題と方向性を考察した。