抄録
番匠谷尭二は、生涯に渡って中東・北アフリカ地域の都市計画に携わった計画家である。清家清の門弟から出発して、パリのATBATでG.アニング、G.キャンディリスらに学んだ。その後アルジェに渡り、イスラム教徒とキリスト教徒が共存できるような住宅地計画に関する業務に従事した。1962年よりM.エコシャールとともに、国連開発計画の専門家として、ベイルート、ダマスカス、アレッポの都市基本計画を策定した。CIAMの理念も参照しつつ、彼らは自動車の導入によって旧市街の活性化を試みた。残念ながら、彼らの近代主義的政策には反対運動が起こり、番匠谷は失意の中で引退した。しかし、それでも彼の業績は多大であり、計画論的分析がなされるべきである。それは中東都市計画物語の序説となるであろう。