都市計画論文集
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小学校児童の空間行動と犯罪被害に関する実証的研究
兵庫県神戸市の5つの小学校を事例に
雨宮 護齊藤 知範島田 貴仁原田 豊
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2008 年 43.3 巻 p. 37-42

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抄録
わが国における「子どもの防犯」は、その必要性が主張される一方で、取り組みの基盤となる実証的な知見に乏しい状況にある。そこで本研究では、兵庫県神戸市の5つの小学校を事例に、小学生の日常行動と犯罪被害の実態を把握し、さらに既存の子どもの防犯を目的とした施策の評価を試みた。2396名の児童と1875名の保護者を対象とした調査の結果、以下の3点が明らかとなった。a)児童の放課後の単独歩行行動は、児童の歩行行動全体の約四分の一を占め、時間的には下校後の外出先への行き帰りに、空間的には通学路など少数の領域に集中する傾向がある。b)児童の単独歩行の集中する時間・空間に、犯罪被害も集中する傾向がある。c)既存の防犯対策は、児童の単独歩行が集中する領域を有効にカバーできていない可能性がある。以上の結果は、既存の子どもの防犯を目的としたまちづくりに、子どもの行動特性を反映させることの必要性を示唆するものと考えられた。今後は、例えば、子どもの単独歩行の集中する領域で、具体的な場所の改善を図るなど、場所だけに特化しない取り組みが必要と考えられた。
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© 2008 公益社団法人 日本都市計画学会
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