抄録
2002年の道路運送法の改正後、バスを中心に自治体が主体的に公共交通の運行に取り組む事例が急速に増えている。多くの自治体では、利用実績や利用者意識などの運行に関する基礎的なデータは収集しており、それらを活用した公共交通の評価・改善が実施されている一方で、公的資金による運行を行っている以上、自治体の施策の中からみた公共交通の位置づけや、あり方について、定期的に住民の意見を問い、政策判断につなげることが、今後より一層重要となると考えられる。本研究では、自治体全域の住民に対して実施される住民意識調査を用いた公共交通評価の方向性とその課題について考察することを目的としている。まず、愛知県の主要都市を対象に、住民意識調査の目的とその調査方法、交通に関する調査項目等についての傾向を明らかにする。次に、豊田市で実施されている市民意識調査の結果を用いることで、住民意識からみた公共交通の評価構造を明らかにする。最後に、公共交通の生活環境や施策評価と実際の公共交通のサービス水準との関連性について確認することで、評価実施におけるその妥当性を検証する。