都市計画論文集
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44.3 巻
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  • 渋谷 和司, 中井 検裕, 中西 正彦, 大澤 昭彦
    2009 年 44.3 巻 p. 1-6
    発行日: 2009/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    近年、団地再生の際に、民間事業者に敷地の一部を分譲する事例が増加している。これまでの建替事業と異なり、民間による開発を伴うことによって、団地らしい特徴的な景観が損なわれる可能性が大きい。そのため、何らかのルールを用いて民間開発を誘導する必要があり、その手法として、景観ガイドラインに着目した。本研究では、まず、景観ガイドライン策定の意義を明らかにし、その上で現在、景観ガイドラインがどのような課題を抱えているのかを把握し、そのまとめとして、景観ガイドラインを用いた今後の団地再生における景観形成方策のあり方について考察した。
  • 松井 大輔, 岡崎 篤行
    2009 年 44.3 巻 p. 7-12
    発行日: 2009/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    2005年に全面施行した景観法により、地方公共団体は変更命令など強制力のある景観形成が可能になった。しかし景観法が日本の景観形成制度にどのような変化をもたらしたのか、はまだ明らかになっていない。本研究は旧自主条例からの移行に着目して、景観法施行前後の景観形成制度の比較から、景観法が景観形成に与えた影響を明らかにすることを試みた。その結果、旧自主条例の制度内容は見直され、景観形成基準等に進展が見られる場合が多いことがわかった。しかし景観法により可能となった強制力のある制度はほとんどの自治体で活用に至っていない。所有者との合意が困難であると自治体が考えている点が課題であり、都道府県が合意形成等を支援する必要がある。
  • 土屋 哲, 岡崎 篤行, 松井 大輔
    2009 年 44.3 巻 p. 13-18
    発行日: 2009/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    確認型総合設計制度は2002年の建築基準法一部改正によって策定された法律である。その目的は許可の手続と容積緩和を迅速に行うことにあった。本制度が施行されてから5年が経過している。本研究では全国的な運用状況とその変遷、建設実績を明らかにし制度的課題を示すことを目的とする。その結果、1)適用を変更した特定行政庁は少なく本制度を積極的に活用している特定行政庁も少ない。2)建設実績も少ない。この事から3)本制度は必要性が低いと言える。
  • 斉藤 直哉, 石川 幹子
    2009 年 44.3 巻 p. 19-24
    発行日: 2009/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は横浜市を対象に、リモートセンシングデータを用いて都市内緑地を抽出し、その二酸化炭素吸収量を既存推定モデルを用いて概算し、その空間分布の土地利用などとの相関を分析することで、都市内緑地の吸収源としての役割とその問題点を分析した。都市内緑地は日本国温室効果ガスインベントリにおいては、把握の困難さから限定的にしか評価されていないが、ALOS AVNIR-2を用いた都市計画スケールでの分析を行うことで、全体としての概算量を把握することができた。結果として市街化の進んだ横浜市においては、都市的土地利用における二酸化炭素吸収量は自然的土地利用の約7割であり、都市域が重要な吸収源であることが確認された。特に住宅地と工業用地における吸収量は無視できず、京都議定書をはじめ、今後の都市環境政策において都市域の吸収源を考慮することは重要であることが確認された。
  • 舟引 敏明
    2009 年 44.3 巻 p. 25-30
    発行日: 2009/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    開発者・土地所有者と周辺住民との間で、開発に伴う既存樹林地の消失に関して争議が起こることがみられる。このような争議は、樹林地などの緑地空間の持つ外部性に起因し、オープンスペースの価値が市場価値の中で無視されがちなことによる。このような緑地空間の外部性を内部化することが重要であり、本論ではこの問題を解決するために、第一に、現在の法制度における内部化手法を概観し、その実現を阻む要因を探るとともに、第二に緑地空間の価値の公表、公的負担支出の先延べ、土地所有者の保有コストの削減等の改善手法を提案し、土地所有者、開発者、市民の合理的な行動による緑地保全を期待するものである。
  • 辰巳 浩, 外井 哲志
    2009 年 44.3 巻 p. 31-36
    発行日: 2009/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、自動車運転時のシークエンス景観を対象に、実際に景色を見た場合と室内において同様の景色を動画により見た場合について、両者の景観評価結果の比較を行うことによりその相違点を把握し、動画の提示による景観評価の有効性について検討することを目的とする。まず、実際に自動車を運転する屋外運転実験を実施し、想起法、選択法、SD法、順位法による景観評価アンケートを行った。その際、車内からの景色をビデオカメラで撮影した。次に、撮影された動画をスクリーンに投射する室内実験を実施し、ここでも屋外運転実験と同様の景観評価アンケートを行った。両実験から得られた景観評価結果を比較したところ、概ね同様の結果となり、動画を用いた室内実験の有効性を確認することができたが、いくつかの点において相違点が見出された。
  • 上田 裕文
    2009 年 44.3 巻 p. 37-42
    発行日: 2009/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    参加型の景観計画には、地域の目標像となる象徴的な空間イメージの共有が不可欠である。風景イメージスケッチ手法(LIST)を考案し、その理論的枠組みおよび調査手法の構築を試みた。さらに、実際に日本とドイツの複数の対象地においてケーススタディを行い、地域で共有される風景イメージを抽出した。環境の見方としての風景イメージは物理的空間と抽象的表象を介して、個人的な身体配置と社会的な場所の意味を繋ぐものである。既往のマッピング手法を改良することで、人々が頭に思い描く風景イメージの空間的構造と意味構造とを一枚のシーンスケッチとして抽出し、そこから各自の環境における定位の様子を読み取った。その結果、個人の体験や知識、美的基準に基づき地域ごとに固有の場所の意味や環境の見方が現れ、シーンスケッチの視覚情報を分析する風景イメージスケッチ手法の有効性が示された。
  • 西部 絵理, 真田 純子
    2009 年 44.3 巻 p. 43-48
    発行日: 2009/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    歩行は健康に効果があるとして、近年注目されている。健康のためには、歩行は毎日習慣として行なうことが大事とされており、健康に資するまちづくりにおいて、歩行の習慣化を推奨し、快適な歩行を可能にする歩行空間が必要である。歩行空間には快適性を阻害しないための要素と快適性を増す要素がある。本研究では、ウォーキングをより快適に楽しむために重要な要素のひとつである風景に着目し、ウォーキングにおいて重要視される風景の種類を明らかにすることを目的とし、ウォーキングを習慣としている人が書いた風景に関する記述を使用し、分析を行った。さらに、その風景の持つ役割や特性を明らかにするため、ウォーカーにヒアリングを行った。その結果、ウォーキングにおいて重要視されることの多い風景は、“変化する風景”であり、その役割はウォーキングの“飽き”を解消することであることが明らかになった。
  • 三井 孝則, 佐久間 康富, 赤崎 弘平
    2009 年 44.3 巻 p. 49-54
    発行日: 2009/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究で明らかとなったことは、以下の三点である。1.農地転用は近年急速に増加しており、転用された農地の約78%が現況では分譲住宅やアパートなどの営利住宅となっている。2.農地転用と周辺の農地の利用状況との変化とは有意な関係がある。農地転用が発生することで、隣接する農地に何らかの影響を与えている。3.農地転用の有無と農地の利用状況との間には有意な関係がある。さらに、農地転用は今後も続くと考えられる。
  • 稲葉 佳之, 厳 網林
    2009 年 44.3 巻 p. 55-60
    発行日: 2009/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、都市近郊地域における農地利用の粗放化、つまり耕作放棄や駐車場・置場等への転用の発生について、20年間・5時期の時系列的変遷とそこから生じる空間パターンを解明することを目的とする。対象地域は神奈川県藤沢市西北部の市街化調整区域およそ737haとし、1/2500スケールで粗放地6種類、農地2種類、都市的土地利用2種類の土地利用図をGISで作成し、土地利用政策、農業政策、空間条件指標との関連を考察した。結果、20年間で全転換面積中の粗放地のシェアが拡大していること、粗放地を経由した都市的土地利用への転換が大きく減少し、粗放地が土地利用転換過程の一時的な利用形態ではなくなっている可能性があること、また、農用地区域、圃場整備などの農業政策は一部を除いて粗放地の発生を十分に抑制しない可能性があることが明らかとなった。
  • 町田市中心市街地の実態データを用いたケーススタディ
    清水 真人, 兵藤 哲朗
    2009 年 44.3 巻 p. 61-66
    発行日: 2009/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    これまで、貨物車の路上荷捌き駐車は荷捌き場所が無いことから、あまり厳しく取締りされてこなかった。しかし平成18年の道路交通法の実施によりその取締りは強化された。一方で、荷捌き駐車場の整備はスペースの確保しやすいところにつくられることから、利用者にとって利用しやすいものとはなっていない。そのため、荷捌き駐車施設の最適配置を計画する方法が必要である。本論文では、町田市で実施された実態調査データを用いて、物流拠点等の配置計画に用いられる施設配置問題を荷捌き駐車施設の計画に適用する方法を研究した。その際、利用者特性を考慮して、横持ち搬送距離や待ち行列理論を用いて駐車施設ごとの必要マス数を算出している。
  • 橋本 成仁, 谷口 守, 吉城 秀治
    2009 年 44.3 巻 p. 67-72
    発行日: 2009/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    都市部を中心に幹線道路の渋滞回避のために住宅地内の道路へ流入する「抜け道」交通が各地で見られ、沿道住民の生活環境の悪化を招いている。この対策として、道路ネットワークの改良などの抜本的な手法もあるが、抜け道として利用されている道路の改良により、ドライバーの意識を変更するという方法も考えられる。本研究では、ドライバーの意識に着目し、抜け道利用されにくい街路空間とはどのようなものであるのかということを検討した。岡山市内での意識調査から、抜け道利用を容認する意識は、街路空間の特性から導き出されてくることが明らかになり、また、ドライバーの認識に道路の物理的空間要素のどの要素が大きく影響してくるかということも明らかになった。この結果は道路空間の改良によってドライバーの抜け道利用をしても良いという意識をコントロールし得ることを示唆しており、道路空間の整備による抜け道交通抑制の可能性を示したものであると考えられる。
  • 鈴木 崇正, 室町 泰徳
    2009 年 44.3 巻 p. 73-78
    発行日: 2009/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では日本全国を対象として、鉄道駅整備前後における鉄道駅周辺の人口密度や自動車利用の変化を分析し、駅整備がそれらに影響を及ぼす可能性について検討した。そして公共交通整備が人口密度と自動車利用との相互関係間に介在する可能性について検討した。クロスセクション分析では、鉄道駅周辺メッシュにおいて相対的に人口密度が高く、また乗用車利用が抑制されていることが確認され、鉄道整備が人口密度と乗用車利用率の双方に影響していることが示唆された。時系列分析では、駅整備が行われたメッシュにおいて人口密度上昇が顕著であったこと、乗用車利用率の上昇が抑制されていたことが示された。特に鉄道サービスの需要と供給が豊富である大都市圏における鉄道整備がより効果的に人口密度上昇と乗用車利用の抑制をもたらす可能性があることが指摘された。このように人口密度が高く、交通サービスが充実している都市圏において、公共交通整備が人口密度と自動車利用の相互関係に介在し、両者間に負の相関関係をもたらしていることが示唆された。
  • 高橋 大輔, 室町 泰徳
    2009 年 44.3 巻 p. 79-84
    発行日: 2009/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、自動車利用者と異なる自動二輪車利用者の駐車特性を考慮し、自動二輪車利用者の駐車場選択行動の検討を行った。鉄道駅周辺地区の時間貸し駐車場において自動二輪車利用者、及び自動車利用者に対して駐車行動に関するアンケート調査を実施し、駐車場選択行動に影響を与える要因を検討した。本研究の主な結論としては、まず、自動二輪車利用者は自動車利用者よりも若年齢者の割合が高く、目的地までの距離に関しては、全体的に自動二輪車利用者の方が長く、通勤や買物目的でも同様な傾向がみられた。自動二輪車と自動車の駐車特性の相違点に関しては、「屋根の有無」等の6項目に関して有意差が認められた。最後に、仮想的な選択肢に基づくSP調査により駐車場選択行動モデルを推定し、自動二輪車利用者と自動車利用者の駐車場選択行動の相違を定量的に検討した。いずれの場合も目的地までの徒歩時間、駐車場料金、入庫に要する時間が有意となった。また、自動車利用者の方が徒歩時間に対して比較的高い抵抗を持つこと、自動車利用者の駐車場選択行動に関する推定結果をある程度自動二輪車利用者にも適用できる可能性があることが示された。
  • 京都市の86商店街の現地調査に基づいて
    濱名 智, 中川 大, 松中 亮治, 大庭 哲治
    2009 年 44.3 巻 p. 85-90
    発行日: 2009/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、京都市内の86商店街を対象として、文献調査及び歩行者数調査をはじめとする現地調査に基づいて、歩行者に対する道路空間配分状況を詳細に把握した上で、商店街の賑わいを定量的に表すために、各商店街の歩行者数を計測し、歩行者に対する道路空間の配分状況が商店街の賑わいに及ぼす影響を定量的に分析した。その結果、歩行者に対する道路空間の配分状況は、既存研究等において商店街の賑わいを表す要因として従来から用いられてきた商店街へのアクセス性や売場面積・店舗密度といった商店街の特性を表す変数と比較しても、同等あるいはそれ以上の影響を及ぼしていることを定量的に示し、歩行者に対する道路空間配分状況は、商店街の賑わいを説明する上で重要な要因あることを明らかにした。
  • 金 利昭
    2009 年 44.3 巻 p. 91-96
    発行日: 2009/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、自転車利用者の満足度を用いて自転車走行環境を評価し、自転車レーンのサービス水準を設定した。具体的な成果は第一に、自転車レーンにおける満足度評価の安定には10回程度の実走行が必要である。第二に、交通環境と満足度の関係を分析し、満足度モデルを構築した。第三に、構築した満足度モデルを用いてさまざまな道路状況における自転車レーン走行環境のサービス水準を設定した。これにより、利用者の満足度指標を用いた自転車レーンの評価を可能とした。
  • 歩行空間の利用状況と歩行者挙動の関係に着目して
    小井土 祐介, 浅野 光行
    2009 年 44.3 巻 p. 97-102
    発行日: 2009/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    歩行者空間の設計については、物理的な処理を重視した基準は存在するものの、錯綜などサービスの質に関する指針は充分に確立されていない。実際、多様な歩行形態が見られるように、様々な個性や目的を持つ歩行者が混在する歩行空間は複雑になっており、本来求められているサービスを発揮できていない。そこで、本研究では集団歩行者と携帯機器使用者に着目し、歩行速度、錯綜などの歩行者の挙動と、密度、歩行形態の混入、歩行者流などの歩道状況の関係を分析した。結果として、数量化理論による分析で、歩行形態や歩行者流が、速度及び追従行動の発生に相対的に大きく関連していることを示した。最終的に、歩行速度と追従行動を指標に、既存のサービスレベルとの変化や乖離を示すことで歩行形態や歩行者流による空間のサービスの変化を定量的に示し、それらの要因が空間のサービスを低下させていることを明らかにした。
  • 村尾 俊道, 藤井 聡, 中川 大, 松中 亮治, 大庭 哲治
    2009 年 44.3 巻 p. 103-108
    発行日: 2009/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、京都都市圏での通勤交通における課題を明らかにするとともに、京都府での実際のプロジェクトを紹介することを通じ、職場MMの実行過程に着目し成功要因や課題を整理する。その結果、実施に至る準備段階においての関係者間の合意、組織の意思形成が重要であることを明らかにするとともに職場MM成功のための知見を提供した。これは、今後、職場MMを他地域で展開される際に極めて有益な知見となる。
  • 米澤 健一, 松橋 啓介
    2009 年 44.3 巻 p. 109-114
    発行日: 2009/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    地方自治体が自動車のCO2排出量削減策を立案するには、複数年次のデータからトリップ数や走行距離などの地域の交通特性から排出量の変化を把握することが重要であるが、全国の都市以外の地域も含めた分析は十分に行なわれていなかった。そこで本研究では、1999年と2005年の二時点のOD調査より推計した全国の市区町村単位の自家用乗用車CO2排出量データから自治体規模別に排出量変化の要因を分析した。一人あたりCO2排出量は、人口5万人以上の自治体では減少、特別区でとくに減少した一方、それよりも規模の小さい自治体では増加した。排出量減少の要因は、いずれの自治体でも排出係数の低下とトリップあたり走行距離の減少の寄与が大きかった。特別区や政令市では運行率の低下や人口あたり保有台数の減少により自家用乗用車の利用や所有が減少した状況が示唆された。一方、小規模自治体ほど一人あたりトリップ数や人口あたり保有台数が増加しており、日常生活での短距離移動が増加した状況が示唆された。本研究により、近年における都市と地方の排出量変化の違いとその要因が明らかになった。
  • 金森 亮, 山本 俊行, 森川 高行
    2009 年 44.3 巻 p. 115-120
    発行日: 2009/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    道路課金政策(ロードプライシング)は、海外の成功事例報告により、我が国でも再び注目されつつある交通施策である。課金を設定することで自動車削減効果が大きい反面、社会的受容性が低いため、実施まで辿り着かないことも多い。本研究では、既存アンケート調査で従来の課金システムと比べて受容性向上が確認された駐車デポジットシステム(PDS)を対象として、効率性・公平性の観点から分析を行い、特性を把握する。所得間の公平性を分析するため、個々人の時間価値分布を考慮できる評価モデルを構築し、名古屋都市圏に適用した結果、真の来訪者に対して返金を行うPDSは、コードン型では返金額が増加するに連れて効率性が低下し、公平性は改善する。一方、エリア型では課金額の半額程度を返金した方が効率性が高くなり、公平性も改善されることがわかった。PDSは、課金収入の即時的な再分配を行っているとも解釈でき、今後、効率性・受容性・公平性などの多視点からより適切な課金システムや再分配方法を検討し、急務の環境改善対策として道路課金政策の実施に向けた利害関係者との協議が望まれる。
  • 安藤 章, 森川 高行, 三輪 富生, 山本 俊行
    2009 年 44.3 巻 p. 121-126
    発行日: 2009/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    都市交通問題の抜本的対策として欧米諸国ではロードプライシングが注目されている。わが国でも、幾つかの都市で導入に関する検討がなされたものの未だ実現されたものはない。その最大の原因は、ロードプライシングの受容性の低さにあるといわれている。このようななか、筆者らは、ロードプライシングの削減効果を保持しつつ、受容性の高い、新しいロードプライシングスキームとして駐車デポジットシステム(PDS)を提案している。PDSの受容性改善効果や交通削減効果は既往研究の示すところである。本研究では、今後PDSの実現に向け必須となる関係者による合意形成過程を念頭におき、現場で発生し得る事象(市民の討論や相互作用)をフォーカスグループインタビューにより実験的に把握するとともに、政策者側から提示される政策情報量が受容性に及ぼす影響、さらに相互作用の特性と影響を実証的に分析した。これによって、PDSの合意形成に向けた戦略的知見の収集を図った。
  • 谷口 綾子, 今井 唯, 石田 東生
    2009 年 44.3 巻 p. 127-132
    発行日: 2009/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、神奈川県秦野市の小学校におけるMMとして、児童を対象に実施した交通・環境教育が、授業を直接受講していない保護者に与えた影響を定量的に検証することを試みた。その結果、交通・環境教育は、児童のみならず保護者の交通に関する心理指標に統計的に有意な影響を及ぼしていることが示された。一方で、保護者の「車への態度」については、交通・環境教育が意図していない方向に活性化されており、授業の中で二面提示を意図し、自動車の利便性、快適性をも強調したことが影響している可能性が考えられる。保護者の交通行動変容については、特に児童を同伴する行動で統計的に有意な差が示されており、車を抑制し、電車、バスの利用が促進されていることが示された。これらより、学校教育におけるMMの一環として実施された交通・環境教育には、授業を直接受講していない保護者にも望ましい影響を及ぼしていることが定量的に示されたと言える。
  • 自由が丘を事例として
    白田 順士
    2009 年 44.3 巻 p. 133-138
    発行日: 2009/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、自由が丘の魅力形成要因を主体の連携によるまちづくり活動と空間としての魅力から明らかにし、道路幅員と容積率充足から容積率緩和による育成策を評価する。研究成果として以下が明らかになった。自由が丘の魅力は、商業者と住民主導による行政を巻き込んだまちづくりを実践し、街路整備や歩行環境整備が進んでいること。そして、住宅地に点在する商業店舗が良好な商業空間と居住空間のバランスを保っていることである。また、自由が丘は街路が狭小であるゆえ、容積率制限により高度利用は不可能であることが明らかになった。以上より、自由が丘での容積率緩和による育成策は非実現的である。ゆえに、今後の自由が丘では、街路整備や歩行環境整備を進めるとともに、住商混在地域での商業業態をコントロールする施策が必要である。
  • 空間構造と社会構造の変容から
    荻野 太一, 杉田 早苗, 土肥 真人
    2009 年 44.3 巻 p. 139-144
    発行日: 2009/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、自治体主導で日系ブラジル人受け入れを行い、外国人割合が全国一高い自治体として知られる群馬県邑楽郡大泉町を対象とし、今後の共生のあり方を模索するために、日系ブラジル人の定住化により従前からの空間構造と社会構造がどのように変容してきたのかを明らかにすることを目的とする。研究の方法としては、ヒアリング調査、文献調査、実地調査による。結論は以下である。1.町全体の空間構造としては、集住の進行および外国人店舗の増加など分離が進んでいる。しかし行政地区などのより小さな空間単位では協働が進んでいる。2.社会構造に見られた変化は町全体にわたる組織や取組から地区別やテーマ別の小さな組織取組への移行である。3.上記の2点より大泉町では空間的な分離が好ましくないものとしてではなく、より積極的に捉えられている。
  • 近鉄四日市駅北側のふれあいモールの場合
    小野 晋平, 藤井 信雄, 浦山 益郎, 松浦 健治郎
    2009 年 44.3 巻 p. 145-150
    発行日: 2009/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    効果的に歩行者空間を整備するためには、沿道の建築敷地と一体となった歩行者空間のネットワーク化のため、道路管理者である行政と沿道地権者との連携が必要である。さらに魅力ある歩行者空間を創出するためには、歩道等の都市基盤と建築空間との連続性や一体性の確保と、創出された歩行者空間の管理運用が課題と考えられる。本研究は、行政と民間が土地と費用を負担しあって歩行者専用通路を確保し、沿道建築物も一体的に計画整備し、整備後も維持管理、利用管理および改修を行っている三重県四日市市の近鉄四日市駅北側にある「ふれあいモール」を取り上げ、歩行者専用通路と沿道建築物が一体的な歩行者空間として計画整備された条件、整備後の管理と改修の実態とこのような継続的な取り組みが行われた条件及び問題点を明らかにすることを目的とする。
  • 線路跡地と駅跡地の土地利用転換状況
    野尻 彰, 大沢 昌玄, 岸井 隆幸
    2009 年 44.3 巻 p. 151-156
    発行日: 2009/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    鉄道廃止に伴い発生した線路跡地は、細長い特殊な形状であるため、一般にその有効活用は困難なことが多い。しかしながら近年、低炭素社会を目指す観点から過度の自動車交通を抑制し、公共交通への転換を促進する上でも、線路跡地を再度見直し、公共交通の一部として再活用する検討も必要であると考えられる。また駅跡地も跡地といったマイナス的なイメージで捉えるのではなく、まち再生及び活性化の種地として再活用することが必要である。そこで本研究は、鉄道廃止によって発生した線路跡地を確認するとともに、線路跡地と駅跡地の土地利用転換の状況をアンケート調査し、その活用実態を把握することを目的とする。その結果、線路跡地は道路として再活用されているものが多かった。その一方で3件に過ぎないが線路跡地を公共交通の一部として再活用した事例も抽出され、現在も活用されている富山地方鉄道射水線跡のバス専用道路について、再活用に至った経緯と運用状況を確認した。駅跡地は、公益施設として整備されたものが一番多かった。それ以外には、駅跡地を新たなまちの拠点として道の駅や観光拠点に再整備し、賑わいを取り戻している事例が抽出された。
  • 梅田 絵里子, 澤木 昌典, 柴田 祐
    2009 年 44.3 巻 p. 157-162
    発行日: 2009/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    都心部既成市街地の再生による都市空間の質の向上が求められている中、個性ある魅力を有する都市空間の創出には、地域性を理解し、利用者としての目線でまちづくりに携わることができる地域主体の取り組みが必要であると考える。そこで本研究では、空間の管理や整備に対する提言活動、空用によって都市空間の質の維持・向上を図ることを空間マネジメントと定義し、大都市都心部において事業者主体で空間マネジメントを行う地域組織を対象に、取り組みの実態および効果を調べた。それにより組織の在り方や空間との関わり方についての知見を得ることを目的としている。まず、近畿圏で活発に活動を行う3組織を抽出し、組織へのヒアリングおよび文献等から、組織の運営体制や空間マネジメントに対する取り組みを整理した。次に現状での各地域の街並みや利用状況から、組織の取り組みの効果について考察を行った。それにより、組織が各地域の特性や課題を理解し、空間のあり方や人々の関わり方についての方向性を示すこと、またそれらを人々に広め、地域と外部をつなぐ役割を果たすことによって、街並みの形成や、空間利用の促進が成されていることが明らかになった。
  • 小川 美由紀
    2009 年 44.3 巻 p. 163-168
    発行日: 2009/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    先進国における産業構造転換後の都市の経済的活性化の原動力として、近年、創造産業が注目されている。才能のある新しい人的資本をいかに惹きつけるかがポスト工業時代の経済的活性化の鍵を握るが、都市にそうした人的資本を集積し定着させるためにはどのような都市空間構造の形成が求められているのか未解明な点も多い。そこで本研究では創造産業を担うアーティストやクリエイターの集積を図る横浜市を事例として、その集積の実態を調査することで知見を得ることを目的とした。調査の結果、創造界隈における事例からは以下が判明した。1)居住地と就業地の選択の傾向や、業務におけるフレキシブルな時間利用といったアーティストらのワークスタイルを支える機能が組み込まれた都市空間構造が求められている。2)拠点についてはアーティストらの活動に適合した整備と運営が求められている。3)歴史的建造物はアーティストらの集積に対して効果のある地域資源である。4)同業者の集積はアーティストらにとって業務上有効に働くことから、同業者の集まる拠点を設置することは、アーティストらの継続的な集積に有効的であると考えられる。
  • グルノーブルにおける合意形成・専門家的諮問機能に着目して
    江口 久美
    2009 年 44.3 巻 p. 169-174
    発行日: 2009/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、フランスの都市の保全的刷新におけるボトムアップ型アソシアシオンの活動に関して、日本への知見を得ることを目的に、グルノーブルの事例を合意形成・専門家的諮問機能の観点から明らかにしたものである。戦後の急激な都市化によって出現したアソシアシオンには、まず、1968年に出現した遺産と開発・古きグルノーブル保護委員会があり、他組織との協働や情報発信を行うことで、核となる専門的諮問機能を醸成した。一方、より一般的な住民から構成された近隣住区連合は、その影響力と連携の強さを活かして、合意形成機能を充実していった。そのような中で、卸売市場やシャスネル館を巡る市との対立も含んだ事例から、2つの機能が、お互いに、増幅し合い機能していることが分かった。また、多様に結びつき合うことで、行政との協働へも高い実効性を担保していることも分かった。また、連合は1982年にPLM法によりフランス全土に設置された。
  • 0~2歳児を保有する世田谷区・家庭保育福祉員と京都市・昼間里親を対象として
    山田 あすか, 佐藤 栄治, 讃岐 亮
    2009 年 44.3 巻 p. 175-180
    発行日: 2009/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿では、小規模保育拠点サービスの展開を支える都市環境のあり方を考究するため、都市環境が異なる2地域において外出保育の位置づけと、保育者による外出保育時の都市環境への評価を捉えた。本稿での分析の結果、小規模保育拠点のスタッフが、都市環境を積極的に利用し、評価していることがわかった。また、都市環境の利用の際には滞留する場所だけでなく移動の空間が重要であること、道だけでなく道に面する民家等の都市環境への寄与、保育拠点(外出保育時の人数)規模に応じて外出先の選択が変わる可能性がある、などの知見を得ることができた。
  • 青森県弘前市「ドテヒロ屋台村」の事例を対象に
    小野 ちれか, 後藤 春彦, 遊佐 敏彦, 山崎 義人
    2009 年 44.3 巻 p. 181-186
    発行日: 2009/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    地方自治体の財政は年々圧迫され続けており、地域を取り巻く様々な問題に対し、地方自治体のみでは限界がある。このような状況を受け民間による事業運営への転換など、様々な事業において運営主体のあり方が模索されている。それは、空き店舗の運用においても例外ではない。空洞化により増加する空き地・空き店舗への対策としてチャレンジショップ事業(が挙げられ、その一つとして「屋台村」といわれる事業モデルがある。この事業は民間企業による運営が特徴の一つとして挙げられるが、その応用例として青森県弘前市の商工会議所による運営の事例が位置付けられる。本稿では、2003-2006年にかけて営業されたドテヒロ屋台村の事例を対象として、商工会議所による屋台村の運営及び空き地・空き店舗運用の利点を明らかにする。それにより、中心市街地活性化の主体としての商工会議所の役割とその可能性を提示する。
  • 商店主・元商店主・地域外商店主の役割の相互補完に着目して
    今野 美里, 後藤 春彦, 佐藤 宏亮
    2009 年 44.3 巻 p. 187-192
    発行日: 2009/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    商店街は町の中で、商業的な空間としてのみでなく、公共性の高い日々の交流の場としての重要な役割を果たしてきたと言え、商店街の衰退が深刻になる中で、両側面から商店街の維持を考えることは重要であると考える。本研究は、平井親和会商店街と春日町通り商店街を対象とし、商店街関係者の現在置かれている状況と交流の実態との関係を明らかにした上で、商店街の商業機能の維持と人間関係の継承を図っていくためのプロセスを考察することを目的とする。商店街の構造変化の将来予測から、今後商店街において、元商店主、地域外商店主が増加することが予測された。交流の実態との関係から、商店主は商店を継承し地域の中での交流創出の場を守り続け、商業機能と人間関係の継承という商店街の持続のための二つの役割を担うことが可能である。しかし、商店主が減少してきている現在、元商店主は、商店街を支え人間関係の継承に努めることが必要で、地域外商店主は商業機能を持続し、交流の場を維持に努めることが必要である。つまり増加している元商店主と地域外商店主が商店主を支えることにより、役割を相互補完し日々の交流の場としての商店街を維持していくことが望ましい。
  • 青森県八戸市中心市街地を事例として
    石川 宏之
    2009 年 44.3 巻 p. 193-198
    発行日: 2009/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、地方都市中心市街地において来街者の回遊行動と小規模賃貸店舗の展開との視点から街路特性と店舗特性を捉え、歩行者通行量を増加させる条件と新規経営者の出店を促進させる条件について明らかにすることを目的とする。八戸市中心市街地を事例として店舗分布と来街者の回遊行動との関係性、小規模賃貸店舗の新規経営者の属性や出店理由・問題点を考察する。平日昼間の歩行者の追跡調査と、小規模賃貸店舗に対するアンケート調査・聴き取り調査を行ない、結果は以下の通りである。中心市街地の歩行者を増加させるには、店舗数を増やしある程度ひしめき合わせ、来街者をゆっくり歩かせて、中心市街地の回遊性を高めることが必要である。新規経営者の出店を促進させる条件は、賃貸料を補助する制度を設けて異業種の新規店舗を誘致し、客層に合った街並みを創ることが必要である。
  • 大阪・日本橋地域を事例に
    杉山 武志, 瀬田 史彦
    2009 年 44.3 巻 p. 199-204
    発行日: 2009/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、近年のコンテンツ産業振興の議論で課題とされるプロデューサーの育成を実現するため、コンテンツ産業構造で重視されている生産立地の視点に加えて、商業立地の視点からコンテンツ企業の集積化とプロデュース行動を捉える視座を、地域活性化の議論と関連させつつ、大阪・日本橋地域を事例に提起した。そして、今後のコンテンツ産業振興策では、コンテンツ企業が商業集積地に起因し集積する可能性と、プロデュース行動プロセスを経験することによりプロデュース能力が育成される視点への認識も必要であるという一定の方向性を導き出した。
  • ティティン ファティマ, 神吉 紀世子
    2009 年 44.3 巻 p. 205-210
    発行日: 2009/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は近年その活動が活発とされているボロブドゥール区レベルで設立された市民組織間関係を把握し、さらに広域になる区レベルの文化的景観保全における各組織の役割を確認することを目的とする。結論は次の通りである:1)タイムライン分析と組織間関係のマッピングによって、各期の組織間関係が異なることがわかった。とくに、3期において関係が最も複雑化し、区レベルの組織と農村集落がつながるようになり、4期では市民組織の数が減り、組織関係はシンプルになるもののつながりは継続していたという経過がわかった。2)市民組織は区レベルの景観保全イニシアチブの役割を果たし、3期以降に設立された市民組織は観光に関する役割より、村おこし、環境改善やコミュニティの強化などの役割のほうが多いことがわかった。
  • 長岡市をケーススタディとした固定資産税に関する―考察
    児玉 寛希, 樋口 秀, 松川 寿也, 中出 文平
    2009 年 44.3 巻 p. 211-216
    発行日: 2009/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    地方都市では、財政状況が厳しい中で、今後も都市計画による市街地整備を実施していく場合、自主財源の確保が急務となっている。市税収入の約半分を占める固定資産税は、地価とも連動しており、新規の宅地供給や土地の高度利用を促す都市計画に関連した税収といえる。そこで本研究は、長岡市を事例として固定資産税収の実態と推移を都市計画との関連から明らかにすることを目的とする。結果として、郊外部での開発により一部では税収の増加が確認されたが、中心市街地ならびにその周辺部での大幅な減少により、市全体での固定資産税収が減少していることが明らかとなった。今後の市街地整備では、税収の確保を考慮した都市計画が必要と言える。
  • オーストラリアにおける先進的な取組事例に着目して
    高野 寛之, 小松 啓吾
    2009 年 44.3 巻 p. 217-222
    発行日: 2009/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は地方公共団体がPRE戦略を実施するにあたり、先進的な取組事例のあるオーストラリアの例を参考に、PRE戦略の実施に向けた体制構築について検討を行うものである。調査方法としては、はじめにわが国におけるPRE戦略の状況について明らかにしたうえで、地方公共団体が実施するにあたっての課題を明らかにする。次に、PRE戦略の実施体制に関するオーストラリアの事例について、インタビュー調査により明らかにすることにより、わが国における今後のPRE戦略実施体制のあり方を検討する。本研究の結論としては、PRE戦略実施に向けた専門部署設置の必要がある点及びPREマネジメントサイクル実践に向けて自治体総合計画及び財政計画との連動が必要であることが分かった。
  • 東京圏内の特定市を対象にして
    谷下 雅義
    2009 年 44.3 巻 p. 223-228
    発行日: 2009/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    現在日本のみならず世界各国において、都市のコンパクト化と称して市街地の拡大を抑制しようという取組みがはじまっている。その際、世帯や企業の立地という需要サイドの行動のみならず、主たる宅地の供給源である農地の転用のメカニズムを把握しておくことが重要である。しかしながら、これまで農地転用の決定要因については定性的な分析が多く、また市街化区域内農地の転用においては生産緑地指定や都市計画税の要因が無視できないと考えられるが、これらについては十分検討されていない。そこで本研究は、東京圏内の特定市における3時点の市街化区域内農地の転用データを用いて、いかなる要因が農地転用に影響を与えているかについて定量的に分析した。その結果、(1)都市計画税率が高い市ほど農地転用率が高くなること、また(2)生産緑地指定率が高い市ほど農地転用率も高いことなどを明らかにした。
  • 千葉県市川市行徳地区『行徳小普請組』の取り組みを事例として
    穂苅 耕介, 神吉 紀世子, 高田 光雄, 北原 理雄
    2009 年 44.3 巻 p. 229-234
    発行日: 2009/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    千葉県市川市にある行徳は、首都圏の住宅地需要に応えながらも、かつて製塩業で栄えた市街地の町割が比較的よく残る地区である。研究対象の『行徳小普請組』は、この地区において、近年、まちづくりと連携して、旧市街地の保全に向けた活動を進める業者組織である。本稿では、住宅地開発による市街地の急激な変化に対し、反立的に展開した行徳のまちづくりの動きのなかでの業者の果たした役割と業態の特質を明らかにすることを目的として分析を行った。その結果として、業者組織は、地域のまちづくり活動との連携のなかで、防災を主とした活動を展開し、各業者の関わり方も一律ではなかった。また、それらの業者には、必ずしも業者の経歴や経営体制などに起因しない、いくつかの異なる業態が認められた。一方で、取り組みへの参加の背景にある旧市街地への見方には、業者間に意識的な繋がりが認められた。
  • 長島 瑞生, 大沢 昌玄, 会田 裕一, 岸井 隆幸
    2009 年 44.3 巻 p. 235-240
    発行日: 2009/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    都市計画法第12条に土地区画整理事業などの市街地開発事業が7種類定められている。その7種類の1つに、1972年に制定された新都市基盤整備法に基づく新都市基盤整備事業があるが、現在までに事業化された地区は存在しない。新都市基盤整備事業は、換地手法を基礎とする土地区画整理事業と、全面買収及び土地収用権能を有する新住宅市街地開発事業の双方の利点を活かす事業手法として誕生した。今後重点化される既成市街地の再編や密集市街地改善では、様々な事業手法のメニューを用意することが必要であり、この換地と土地買収という手法を重ね合わせる理念と制度構成は、今日でも十分検討に値するものがある。そこで本研究は、新都市基盤整備事業の全体像を解明する基礎的研究として、新たに市街地開発事業手法として新都市基盤整備事業が必要とされた背景を解明する。そして逐条解説や実施事例がないことから、関係する専門雑誌や文献、国会審議の内容を網羅した上で新都市基盤整備事業を述べているものを抽出し、事業システムと内容について確認すると同時に、候補地の検討と実施事例がないことについてどのような議論がなされていたのか明らかにする。
  • 群馬県前橋市を事例として
    塚田 伸也, 湯沢 昭, 森田 哲夫
    2009 年 44.3 巻 p. 241-246
    発行日: 2009/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    全国の都道府県において作成、公表されている「見直しガイドライン」の資料を収集し、評価視点、再評価の現状を把握し、見直しガイドラインの評価手法を踏まえ、都市計画道路の整備状況や市町村の実情を考慮できる評価手法を提案しものである。結果、見直しガイドラインの資料を収集し、評価視点、再評価の現状を把握した。ガイドラインに示されている視点、キーワードにより都道府県のガイドラインを類型化した。また、ガイドラインの評価の流れを分類したうえで、群馬県の見直しガイドラインを参考に、都市計画道路の整備状況や市町村の実情を踏まえ、各路線の特性を体系的かつ定量的に評価する手法を提案した。さらに、提案した評価手法により、具体的なケーススタディとして、群馬県前橋市の都市計画道路を適用し、整備優先路線、整備有効路線、変更・廃止候補路線を抽出した
  • 佐野 育実, 岡崎 篤行, 梅宮 路子
    2009 年 44.3 巻 p. 247-252
    発行日: 2009/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    近年、都市計画道路の見直しが必要とされている中、都道府県による都市計画道路の見直しガイドラインが策定されている。しかし、都市計画道路の見直しには、沿線住民の合意形成が困難であることや、見直しの主体が曖昧であることから円滑に進まないという課題がある。これらの課題に対して、都市計画道路の見直しガイドラインの記載内容や運用実態が明らかとなっていない。本研究により、都市計画道路の見直しは全国的にあまり進んでいないこと、住民の合意形成を偏重した見直しのプロセスであること、見直しの主体が市町村であることから客観性や広域的視点よりも地域の実情が重視される可能性があることが分かった。今後の課題として、都市計画理念からの路線の必要性の検証、第三者機関の導入、都道府県による見直しの対象となる路線の抽出等が挙げられる。
  • 姥浦 道生
    2009 年 44.3 巻 p. 253-258
    発行日: 2009/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    近年の温暖化問題や資源エネルギー問題の深刻化を受けて、風力をはじめとした再生可能エネルギーの活用が重要視されてきている。それに伴い、多くの風力発電施設がわが国でも建設されてきており、その立地コントロールの必要性が高まってきている。本研究では、世界有数の風力発電施設の立地国であるドイツを事例として取り上げ、そのような風力発電施設の立地コントロールの制度と運用実態を明らかにした。結論としては、ドイツにおいては都市計画的に風力発電施設の立地を一定地域に集中させるための計画制度(F-plan等における集中地域指定制度)が存在すること、そして自治体はそれを積極的に活用しており、また開発は概ねその集中地域内で行われていること、但し敷地レベルの計画まではほとんど行われていないこと、集中地域の指定にあたっては、その計画理由が総合的に適切に根拠付けられていることが必要とされていること、等を明らかにした。
  • 大塚 康央, 瀬田 史彦
    2009 年 44.3 巻 p. 259-264
    発行日: 2009/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    この研究は、住民が発案する都市計画のうち、2002年に制度が設けられた「地区計画の決定を申し出る制度」を対象に行った。「地区計画の申し出制度」は、市町村の条例で、運用の方法を定め、住民の発意を、都市計画として決定できるものである。しかし、市町村における条例の制定は、進んでいるとは言い難い。この大きな理由は、都市計画提案制度によって、条例が制定されなくとも、住民が都市計画を発案することが可能となったことにあることが分かった。しかし、住民組織の設立や住民によるまちづくり計画作成を市独自の政策として定め、これを受けて、法的拘束力のある都市計画として決定する仕組みとする条例を定めている例が見られる。これは、住民によるまちづくり活動と法定都市計画の関係のあり方を考えるヒントになるものと考える。
  • 藤井 さやか, 小山 雄資, 大澤 義明
    2009 年 44.3 巻 p. 265-270
    発行日: 2009/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    非線引き白地地域の土地利用コントロール手段として特定用途制限地域の活用が注目されている。当初は線引き廃止に伴う代替的な土地利用規制として導入された事例が多くみられたが、近年は従来からの白地地域において、各地域の実情に応じた積極的な導入事例が増加している。本研究では、地域の課題に応じた本制度の活用方策の手掛かりを得ることを目的として、自治体担当部局へのヒアリング調査と資料調査から指定実態を通覧し、導入目的と規制内容の類型化を試みた。その結果、線引き廃止に伴う規制緩和型の指定の他に、規制強化型となる(1)都市基盤整備の進捗にあわせた予防的な指定、(2)土地利用上の問題への対応策としての指定、(3)都市計画の見直し・再編に伴う指定に分類することができた。関係者間での意向調整や財政的負担、導入の迅速性などの点で、用途地域の指定や地区計画の策定よりも導入が容易であり、今後も指定地域や規制内容の拡大が見込まれる。ただ、特定用途制限地域では対象とならない意匠・形態に関する規制との併用事例は少数にとどまっており、農業環境や自然景観との共存を考えると、より実効性のある土地利用規制にむけた制度改正も望まれる。
  • 組合施行を対象として
    出口 近士, 吉武 哲信, 佐多 孝徳, 浅野 誠
    2009 年 44.3 巻 p. 271-276
    発行日: 2009/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    土地区画整理事業は権利者が多数であることや事業期間が長いこと等に起因して、多くのリスクを含んでいる。その結果、リスクの特定やプロジェクトマネジメントの観点からリスクの影響度を評価させることが重要となっている。本稿では、区画整理に対して2年以上の経験を持つ区画整理技術者に、事業破綻に及ぼす影響度を一対比較法で回答してもらい、これをAHP法で分析した。土地区画整理事業を4つの事業段階に分類し特定した37のリスクを、既存の参考文献で分類されている8つのリスクのタイプと比較した結果、両者に一定の適合性が確認された。また、AHP分析による定量化された資金計画の破綻に与えるリスクの影響度は、概ねDID区域内外の特徴とも整合していることから、本稿で特定したリスクや影響度は、土地区画整理事業におけるリスクマネジメントやプロジェクトマネジメントに有用であると考えられる。
  • 櫻井 健太朗, 川島 和彦
    2009 年 44.3 巻 p. 277-282
    発行日: 2009/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    行政は耐震性能の劣る木造戸建て住宅の耐震化を促進すべく、住宅を耐震化するプロセスに対し助成を講じている。しかし『個人の安全確保』という観点から助成を講じている自治体が多いことから、住宅所有者が耐震化を個人的課題として捉えてしまい、それが耐震化促進の阻害要因となっている。以上の認識から本研究では、自治体における『地域の安全確保』を考慮した助成制度の助成根拠や助成実績をもとに分析し、『地域の安全確保』に配慮した耐震改修等助成制度の枠組みとして(1)耐震改修と建て替え・簡易改修・防火改修の関係の明確化、(2)既存不適格建築物の緩和措置などを提示し、かつ防災都市計画における助成制度の位置づけを提示した。
  • 飯島 縁, 真野 洋介
    2009 年 44.3 巻 p. 283-288
    発行日: 2009/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では木造密集市街地である墨田区東向島を対象に災害時の避難リスク軽減を想定して、塀など屋外工作物の撤去による街路の安全性の確保や、通り抜け通路の保全及び創出の有効性を検証すると同時に、実現可能性を考察することを目的としている。本研究により明らかになったことは、塀の撤去によって安全性が高まる街路があり有効性は示せたが、建て詰まっている細街路は、建替えが起こらなければ街路の安全性も確保出来ないなど、全ての街路が安全になるわけではない。通り抜け通路の保全及び整備によって、避難がしにくい場所の住宅のほとんどが2方向避難が可能となり、安全性が向上することが示せた。
  • 市古 太郎, 中林 一樹
    2009 年 44.3 巻 p. 289-294
    発行日: 2009/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    東京都は首都直下地震への備えとして、市区職員を対象とした都市復興図上訓練を1998年から毎年実施している。本研究は、首都直下地震被害想定の公表(2006年)などこの10年間の事前復興対策の展開を踏まえ、事前復興対策としてどのような役割を果たしているか、HatryのPerformance Measurement手法を用いて効果を測定し、都市復興図上訓練の総合的な考察と課題を整理するものである。図上訓練に投入された資源や影響要素をOutcome-Sequenceチャートで整理した上で、訓練参加者に対してのアンケート調査票調査を実施し効果を分析した。結論として。図上訓練が市区自治体の事前復興対策の展開およびプランニング力向上に一定の効果を持っていることを明らかにし、今後展開する上での課題を述べた。
  • 地域特性を考慮した防犯まちづくりにむけた基礎的研究
    雨宮 護, 島田 貴仁
    2009 年 44.3 巻 p. 295-300
    発行日: 2009/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、地域特性を考慮した防犯まちづくりに向けた基礎的知見を得るため、人々の犯罪不安と地区レベルでの環境の特徴との関連を明らかにすることを目的とした。データとして用いたのは、千葉県市川市に居住する2000名の成人男女を対象としたアンケート調査と、既存のGISデータである。アンケート調査の結果をGISデータに基づいて類型化された地区ごとに比較した結果、人々の犯罪不安の程度や不安に感じる場所の数、不安箇所の地理的集中度は地区によって大きく異ならない一方、犯罪不安を喚起させる場所の土地利用や理由は地区ごとに傾向が異なることが明らかとなった。具体的には、戸建住宅地や郊外部の農住混在市街地では、荒地等が、暗く、人目がないことが不安を喚起させ、商業、工業などと用途が混在した住宅地では、公園や道路に怖い人がいたり、秩序紊乱行為があることが不安を喚起させているといった違いが見られた。今後に向けては、画一的な対策を満遍なく行うのではなく、各地区において場所を絞りつつ、地区ごとの問題に即した解決を図っていくことが必要であることが示唆された。
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