都市計画論文集
Online ISSN : 2185-0593
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スラムコミュニティの開発過程に関する研究
フィリピン・バランガイ・ルスを事例として
小早川 裕子藤井 敏信
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ジャーナル オープンアクセス

2009 年 44.3 巻 p. 613-618

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抄録

本稿は、フィリピン・セブ市の大規模なスラムコミュニティの開発事業の展開に着目しながら、その過程を分析し、コミュニティ開発を方法論的に考察する。土地取得事業から始まった研究対象コミュニティであるが、急速な開発に影響されて返済条件が厳しくなり、土地取得事業は全体として成果をあげずにいる。その一方で、土地取得事業は、住民に当事者意識を目覚めさせ、放置されてきた環境問題や社会・経済問題に対して主体的な取り組みへと住民を促すことにつながった。住民活動を市とNGOがパートナーシップのもとに支援し、次第に住民による主体的で多様な活動展開が顕著になっていった。住民のより広範な参加と現行の諸活動拡大を計画的に行うことを目的として、参加型のワークショップ形式を取り入れ、総合計画をコミュニティが自主的に策定している。本稿では、当該地区のコミュニティ開発を3段階の開発プロセスにまとめ、都市に埋め込まれた大規模なスラムにおいて、住民、行政、NGOがアクターとなったオンサイトでのコミュニティ開発では、段階的なプロセスの中に新たなソフト、ハード両面の事業、実験的なビジネスや住民の組織化を包含した方法の有効性を論ずる。

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© 2009 公益社団法人 日本都市計画学会
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