抄録
本稿は、スペイン・バルセロナの市街地拡張プラン(1859年)を作成した土木技師イルデフォンソ・セルダに着目し、彼の大著「都市計画の一般理論」(1867年)の構築に至るまでの各種理論書の展開やそこで示された計画概念の包括的な特徴を明らかにするとともに、それらの継承関係、連続性を解明することを目的とする。セルダは旧市街の「改善」ならびに新都市の「拡張」のために必要な理論を構築する過程において、徐々に論点を物理的な空間の平等性から開発に際する地権者の経済的な平等性へと移していったこと、プランの実施にあたってもとの内容に必ずしも固執せず、理想を各段階での現実と調和させるだけの柔軟性を持ち合わせていたことなどが明らかとなった。