2010 年 45.3 巻 p. 475-480
本研究では、対象とする都市交通メガプロジェクトに関与した人々から得られる自由回答インタビューデータと一般資料とを、言語情報処理技術を援用して比較することで、一般資料からは得られにくいものの、インタビューデータからは捕捉し得る対象プロジェクトに関わる経験知識の抽出を試みた。インタビューデータに出現しやすく、一般資料に出現しにくい単語を形態素解析により抽出した結果、「住民」の他、「地下鉄」や「埋設物」といった単語が見られ、インタビューデータにおいて「住民」、「地下鉄」事業主体、「埋設物」管理主体との関係に関わる文脈がより多く抽出される可能性が示唆された。また、談話分析を用いて、対象プロジェクトに関わる経験知識の抽出を試みた結果、「プロジェクトに対する「住民の理解」を得ること」、「プロジェクトに対する「行政の理解・承認」を得ること」に関連付けられる経験知識がインタビューデータから捕捉し得ることが示された。総じて、インタビューデータから得られる経験知識は、今後、他のプロジェクトを実施する上で多くの有用な内容を含んでいるものと考えられる。