抄録
内閣府は2010年4月に大規模水害に関する報告「首都圏水没:被害軽減のために取るべき対策とは」を公表した。その対策にはさまざまなアプローチが含まれるが、重点対策の1番目にある「広域避難」の方法論について、防災都市計画の視点から取り組む価値があろう。本研究は、広域避難のツールであり、すでに配布活用されている「洪水ハザードマップ」に着目し、その認知や避難準備行動などに与える影響について、荒川下流左岸、葛飾区堀切地区と新小岩地区を対象に、4,600通のアンケート意識調査を実施し、考察をおこなったものである。結果として、ハザードマップを「見たことがある」世帯は70%で、閲覧度合いは(1)カスリーン台風経験、(2)町会活動への協力状況、(3)日常時の河川利用頻度、に影響を受け、特に(2)の因子は、町会組織活動が有する共同防衛意識を意味するものと考えれることなどが明らかとなった。また分析結果をもとに、広域避難率を向上させていくため情報戦略チャートを作成し、考察をおこなった。