2011 年 46 巻 3 号 p. 223-228
本研究は、奈良町に残る伝統的町家に対する価値意識と保存再生手法の評価を推計し明確化することを目的とする。奈良町の居住者や店舗経営者のような奈良町生活者と奈良町への来訪者に対して、町家の各価値要素と保存再生手法案の比較をそれぞれ行い、さらに仮想的な質問として、町家の現状を踏まえた上で町家の保存再生に向けた寄付金への支払意志額を尋ねる調査を行った。その調査結果をもとに、CVMを用いて町家の評価を定量的に推計し、AHPを用いて奈良町町家に対する価値構成と保存再生手法の評価を明らかにした。訪問者と同様に属性の異なる市民グループとの比較を行った。その結果、(1)奈良町町家に対する評価は、京都や金沢の研究事例に比べ低く捉えられている(2)文化的価値の認識が支払動機につながると考えられる(3)文化的価値を重視すると考えられる保存再生手法はあるが、奈良町生活者は外壁のみ町家を保持し内部は現代風に再生する手法を最も重視していることが明らかとなった。