2011 年 46 巻 3 号 p. 559-564
本研究の目的は、東京大都市圏における持家取得者による住居移動を分析することである。少子高齢化に伴う人口減少社会への移行によって、郊外住宅地の縮退と選別は、いわばモザイク状に進行していくと推測される。しかしながら、従来の研究では調査手法の限界やデータの不整備などにより、ある特定の住宅地を研究対象とする着地に焦点を定めた分析、あるいは市区町村単位データもしくはメッシュデータの経年比較から、人口の増減を相対的に比較する分析が多い。ある期間にある空間内で発生する住居移動の全体像を俯瞰して、郊外住宅地の縮退や選別の可能性を検討するためには、従来の研究のみでは十分とは言えない。そこで本研究は、持家取得者の発着地を同時にとらえることができるOD(Origin-Destination)データを用いて、東京大都市圏内で実施された持家取得者の住居移動を分析する。このODデータを分析することで、これまで明らかにされてことなかった持家取得者個人の住居移動を町丁目レベルで精密にトレースすることができる。