2011 年 46 巻 3 号 p. 739-744
本研究では都市のコンパクト化の評価指標として財政面と環境面に着目し、地域の現状をできるだけ反映した推計モデルの構築を行なった。また、宇都宮市を対象として分析を行なった結果、コンパクト化は財政面、環境面の双方において有利に働くことが確認された。特に、都市構造の変化の影響を受けやすい財政面における効果は大きいことが分かった。しかし、従来から効果が期待されていた環境面については、財政面ほどの効果が発現していない。これは交通分野の低炭素化は、都市のコンパクト化だけでは困難であることを示しているといえる。地方都市の交通部門のCO2排出量の大半は自動車交通であり、自動車交通の総トリップ長の減少がそのカギを握っている。個人の交通行動がより環境にやさしいモードへシフトするような施策の実施や、通過交通量の多い道路の道路円滑化など、総合的かつ広域的な施策が不可欠である