2011 年 46 巻 3 号 p. 745-750
日本の地方都市では、郊外化の進展に伴い交通弱者である高齢者にとっては移動が困難な状況となっている。コンパクトシティ構想の実現のためには鉄軌道のサービスレベルの向上が重要であるが、高齢者の人口分布と鉄軌道駅の整備の関係性を明らかにした研究はない。そこで本研究では、日・仏・独において高齢者の人口分布と鉄軌道駅の空間データを構築することで、運行頻度の高低による鉄軌道駅周辺の高齢者の人口分布の違いについて把握した。その結果、フランスやドイツに比べ、日本では高齢者が多く居住する地域において運行頻度の高い鉄軌道駅が少ないことを明らかにした。また、運行頻度が高くなるにつれ、駅周辺に居住する高齢者人口は増加していき、高齢者割合は減少していく傾向があることを明らかにした。さらに、日本では、鉄軌道駅の周辺では高齢者人口は増加しなくなってきており、その傾向は運行頻度が高い駅ほど強いことを明らかにした。