日本透析療法学会雑誌
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Recombinant human erythropoietin補充療法による慢性血液透析患者の運動耐容能の変化について
中村 隆渡辺 有三坂本 信夫山本 尚哉伊藤 晃山崎 親雄島岡 清島岡 みどり
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1989 年 22 巻 11 号 p. 1211-1218

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抄録
維持透析 (HD) 患者の運動耐容能が極めて低下している理由の一つに貧血が考えられているが, 未だ定説化していない. そこでHt 25%未満の貧血を合併したHD患者25名 (男9名・女16名) を対象にrecombinant-human erythropoietin (r-HuEPO) を投与し, その治療前後に同一強度の運動負荷テスト (Ex1, Ex2) を行い, 血圧, 心拍数, Rating of perceived exertion (RPE: 主観的運動強度), 血液諸指標の変化について比較検討した. Ht値は22.7±1.5%より29.0±2.2%と有意に上昇した. それにより, Ex2ではEx1に比し, 運動完遂例は増加し, 心拍数, RPE指数, 通動負荷後乳酸値, 運動負荷前CPK (pre CPK) 値は有意に低下した. また, Ex1完遂例のpre CPK値はEx2のpre CPK値と差を認めなかったが, Ex1非完遂例に比し, pre CPK値は有意に高値を示し, かっEx2では有意に低下した. その他の諸指標はEx1とEx2の間に統計的差異を認めなかった. 以上の結果より貧血改善により, HD患者の運動耐容能は向上したが, その理由としては好気的代謝, 骨格筋の虚血, 心血行動態の改善が示唆された.
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© 社団法人 日本透析医学会
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