都市計画論文集
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中国四川省都江堰市のグリーンベルトにおける農村地域の文化的景観に関する研究
石 鼎石川 幹子
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2012 年 47 巻 3 号 p. 1009-1014

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抄録

本研究では、都江堰市の田園風光帯(グリーンベルト)における文化的景観の基本的構造を分析し、以下の点が明らかになった。第一に、該当田園風光帯は、2000年以降の急速な都市拡大を防ぐため、震災復興計画の策定をきっかけに、ハワードの田園都市の理論を導入し、市区をめぐる広大な農村地帯を初めて都市構造の不可欠の一環として定着している。第二に、対象地の文化的景観の特質は、都江堰水利工による沖積平野を流れる緻密な灌漑用人工水路が整備され、その上に多様な樹種が構成する屋敷林を持つ集落の群落と、複合的な作物生産用の農地からなる田園景観が広がることにある。天然河川を巧みに利用した灌漑方式と緻密で有機的な土地利用を反映する人と自然の共同作品であるといえる。第三に、文化的景観の変遷については、近代化による農村インフラの向上、都市化、農村観光産業開発による装飾性植物への需要の激増が景観変遷の要因となっていることがわかった。

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© 2012 公益社団法人 日本都市計画学会
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