2012 年 47 巻 3 号 p. 1021-1026
ヴィエトナム・フエ香江流域圏に阮朝時代に建造された紹治帝陵の周辺には、現在自然と歴史的建造物と調和する豊かな地域環境が存在する。そこでは皇帝陵の周辺で暮らす集落住民が、紹治帝陵内の湖から排水される地域において、ヴィエトナム戦争中に集落が発生してから、継続的に水田管理を行ってきた。こうした集落住民の営農活動は遺跡と共に設計された歴史的な水システムを維持することに貢献していると考えられる。本稿では、この集落の持続可能な居住環境の創造に資する知見を得るために、以下のことを明らかにした。1)集落が紹治帝陵周辺における水システムの管理に携わっている実態 2)集落形態が住民世帯の世帯分離とともに変容、拡大している実態 3)自律的な住環境整備に向けた課題