2012 年 47 巻 3 号 p. 223-228
本研究は、大阪府堺市南東地域を対象に、土地利用制度が農地の管理粗放化と自給的利用に与える影響を包括的に解析することで、都市近郊農地保全に関する今後の土地利用制度の枠組み構築に寄与することを目的とした。土地利用制度の影響評価に当たっては、広域に適用可能かつ客観的な指標を用いることに留意した。加えて、農地管理の粗放化への隣接土地利用などの影響が指摘されていることに鑑み、多様な要因の相対的な影響にも留意した。なお、本研究では、都市近郊における主要な農業形態である野菜生産のための畑地に着目してデータの収集および解析を行った。その結果、農地管理状況に関する分析により、土地利用制度が隣接土地利用とならんで農地管理粗放化に影響していることを明らかにした。また、特に宅地化農地において、住民により自給的に利用されている農地が、相当程度存在する可能性を明らかにした。こうした小規模区画は従来の都市近郊農地の保全に関する制度的枠組みの議論では十分に注目されてこなかったが、今後は、隣接土地利用に配慮した集団的農地の保全に加えて、小規模農地の管理継続に貢献する仕組みの検討が求められる。