2013 年 48 巻 1 号 p. 100-109
本研究は,東日本大震災時後における仙台平野特有の農村景観要素、“居久根”と呼ばれる屋敷林の研究である。塩害による伐採が始まる前に実施した現地調査や住民アンケート調査の分析を行い,居久根の塩害状況を詳細に把握するとともに,津波来襲時に居久根が果たした役割を明らかにした。塩害状況に関しては、スカイラインを形成する高木層が、他樹種に比べて塩に弱いスギであるため,甚大な被害を受けて伐採されていることが明らかとなった。対照的に、中低木層に多く見られたシロダモ・ヤブツバキ等の常緑樹は,塩に強いことが明らかとなった。また居久根の防災機能に関しては、高台の存在しない平野部において,集落東縁部の世帯では,海側に存在した居久根が津波とともに流れてきた流木・瓦礫を防ぎ,その他の世帯では津波が来る反対側の北側・西側の居久根が,家屋・家財等の流出を防ぐなどの防災機能を果たしたことが明らかになった。