2013 年 48 巻 3 号 p. 615-620
大都市への人口集中は震災リスクを高める一方,経済効率の向上に寄与する.つまり都市機能の地理的集積に関し,震災リスクの低減と経済効率向上の間にはトレードオフが存在すると考えられ,望ましい国土利用構造の検討には,両者の整合的な評価が必要である.その際,地震被害は特定の一期間に発生するため,評価においては被害の単純な期待値ではなく,時点間の負担の公平性の考慮が必要と考えられる. 本稿では,全国の地震動の発生確率の下で,国土利用構造と担保すべき公平性の違いがもたらす社会厚生への影響評価を試みた.その結果,功利主義的な価値規範の下では分散型構造は正当化されないが,時点間の公平性を考慮した価値規範の下では正当化されうることが示唆された.