本研究では、棚田を観光資源として利用し、風景を再生させた事例として、鴨川市大山千枚田を取り上げる。保存会、農業従事者、行政などの関係者へのアンケートとヒアリング調査を通じて、風景資源価値(文化財、観光資源)、資金の観点から意識と課題を報告することを目的とする。アンケート調査より、大山千枚田の風景を保全する価値を認識している意見が、回答者の86%と多数になっていることは、本調査で顕著に表れた結果である。また、補助金の額がそれほど多くないものの、風景保全のための補助金の有効性は、回答者の77%で認識されている。補助金(棚田の補修費等)のある文化的景観制度を必要と感じる人は96%に及ぶことから、文化的景観のニーズは、全体として十分にあることがわかった。観光については、アンケート、ヒアリングともに観光業者や観光客のマナーの問題が指摘されており、観光業者側に徹底させる必要があることが明らかにされている。