抄録
歴史遺産を観光資源とする都市には、現代建築に擬古的な意匠を取り入れ、地域の歴史性を演出している都市があり、中国を始め各地にみられる。敦煌市では、独特の地域性を活かして、他都市との差別化をはかろうとする政策が注目される。本研究は敦煌市の景観政策の内容を把握し、それが具体的な建物更新にあたってどのような意匠に反映されているのかを明らかにし、歴史遺産を観光資源とする都市の景観演出のあり方を考えようとするものである。敦煌市の景観政策の二大方針として、「伝統的建築の風格」と「砂漠気候を体現する地域の風情」が掲げられていた。前者には瓦屋根や組物等の意匠、後者にはラクダや飛天をモチーフとする意匠がみられた。「伝統的建築の風格」の時代設定では、中国各地でみられる"明清風"でも"唐風"でもなく、"漢風"とすることと、砂漠気候である独特の地域性を活かすことで、他都市との差別化をはかろうとしていた。敦煌市市街地の景観が歴史性・地域性を表現した景観となっているか検証することは課題として残るが、敦煌市は、他の観光都市における景観整備の参照にあたいする事例といえよう。