通説では,満州国の都邑計画法は,1968年の都市計画法全面改正を先取りし,1970年の建築基準法第五次改正を越えていたと説明されていますが,その根拠は法律の規定が似ているということです。本研究では,満州国都邑計画法の建築物の用途規制,形態規制および緑地区域について都市計画法や建築基準法と比較分析を通して,制度が継承されているのか考察しました。用途規制は細分化されていますが,満州国に多い新規市街地の統制に適していて,内地や朝鮮・台湾のような既成市街地へは適用しにくく,建築基準法とは異なる方向へ進化していました。また,緑地区域は制度化されたという点で画期的でしたが,要するに土地利用の規制のみに頼った制度の一つでした。1968年の都市計画法の市街化調整区域は,規制のみによる制度の弱点を踏まえて,人口圧力の吸収を考慮していましたので趣旨が異なります。法文上にも思想の違いが顕れていていました。