2016 年 51 巻 3 号 p. 680-687
歩きに主眼を置いた空間計画が日本中で注目を集める中,歩行者の回遊行動に基づく計画評価の手法の必要性が高まっている.歩行者の経路選択行動は,1)経路の多様性が高く選択肢集合の生成が困難であり,2)プレトリップ型の意思決定が仮定できない,3)移動と滞在の連続性が高く,トリップ単位のモデルは適さない,という特徴を持つことから,既存の交通行動モデルでの記述が難しかった.本研究では,状態遷移確率に基づいた選択肢非列挙型の活動経路選択モデルの定式化を行った.活動経路の時空間的な特性を考慮するため,時空間プリズム制約,将来期待効用に対する割引率パラメータを導入し,さらにn-GEV型の定式化を行なうことによって,経路相関を記述した.それによって時間制約を持ち,出発地へ戻ってくる複数の活動を一体的な配分結果として出力することが可能となった.数値計算では,時空間割引率が回遊時の意思決定を左右する重要なパラメータであること,スケールパラメータの操作がIIA特性を緩和することを確認した.また松山中心市街地を対象とした歩行者の活動配分を行い,時間制約が時間と空間の使い方に影響を与えていることを明らかにした.