本稿の仮説として「住民・地域の自立に向けたまちづくり」、即ち「地域による困窮する住民へのちづくりは、『住民の自立』のみならず、更に『地域の自立』を催す効果もある」である。仮説実証の研究対象として台北市の貧困地域「竜山寺地区」に着目して、そこでの路上生活経験がある困窮する住民の自立に向けたまちづくりに取り組む地域団体社団法人台湾芒草心慈善協会の活動への調査を通して実証を行う。評価軸として住民の自立の場合は、「安定した収入・住居の確保」の2項目で、地域の自立では「まちづくり事業の自立可能な事業性」である。芒草心の事例調査から、そのまちづくりは「住民の自立」のみならず、「地域の自立」への効果も確認できた。芒草心は困窮する住民の仕事づくりのために創造的な事業創出に積極的に挑み、その成果として地域のまちづくりの自立性の向上にも繋がっていると評価できる。この試みは今後、コミュニティ・ビジネスを核とするまちづくりの推進にあたっての重要な参考となり得る。 ただし、安定した住居の確保という項目では、自立した住民のための低廉民間賃貸住宅の充足な供給の確保は、竜山寺地区の課題として考えられる。