2018 年 53 巻 1 号 p. 97-107
さまざまな理由により、わが国の地方都市における公共交通に対して寄せられる期待はこれまで以上に大きくなっている。公共交通を効率的に維持し、改善していくためには、公共交通という移動手段がもたらすアクセシビリティの水準を精確に評価することが必要である。一般に、そうした評価にあたっては、高価なGISソフトウェアやデータが不可欠であると考えられている。しかし、フリーで地理情報処理を実行するソフトウェアやサービスが利用可能となり、やはりフリーの空間データが入手可能となってきていることから、必ずしもそうではないようにも考えられる。本稿では、実際に、フリーのデータ、ウェブサービス、ソフトウェアのみによって、わが国の地方都市における公共交通アクセシビリティが可能であることを示す。より具体的には、青森県弘前市の循環バス路線を対象としたケーススタディを通じて、QGIS、Google Distance Matrix API, 国土数値情報データと若干のPythonプログラミングによって公共交通アクセシビリティ評価が可能であることを示す。