抄録
近年、気候変動や都市ヒートアイランド現象による都市温暖化が進んでおり、その影響の緩和が求められている。沿岸都市において、海風を市街地に取り入れることは、都市温暖化の影響緩和につながると考えられる。そこで本研究では、沿岸部の中高層市街地(横浜市関内・関外地区)を対象に、街路の風分布(数値計算)および気温分布(実測調査)を把握し、街路の風環境に対して街路特性や立地特性が与える影響を把握すること、そして風環境が気温分布に与える影響を把握することを目的とした。また、あわせて風環境の影響要因による街路の類型区分を行い、海風の利用の推奨エリアの抽出を行った。結果として、以下の知見を得た。(1)気温の移動実測調査より、東風が卓越する午前中は海岸線からの距離が気温に与える影響が大きい。一方午後にかけて、他の要因(南からの海風等)の影響力が大きくなる。(2)対象地において海岸線からの距離が1000m以内の街路の平均風速が比較的大きい。(3)対象地においては、都市の平面形状が風速に与える影響が大きい。(4)市街地形態の特徴毎に対策を導入することで、対策導入街路において風通し改善効果が見られる。