都市計画論文集
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EMアルゴリズムを用いた土地所有形態選択問題のモデル化
小林 里瑳羽藤 英二
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ジャーナル オープンアクセス

2019 年 54 巻 3 号 p. 1245-1252

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抄録

本研究では,近代地方都市における界隈形成のメカニズム解明に向けて,土地所有形態選択問題として統計的モデルを用いた全く新たな都市形成史分析手法の提案を試みた.モデル構築において,所有筆=土地とその所有形態の同時選択確率を記述可能なCNL型の離散選択モデルを提案し,所有形態の選択に関して地主の態度の異質性を仮定した潜在クラスモデルを導入した.パラメータ推定には,隠れ変数を含む選択確率の対数尤度関数最大化問題の求解に適していることから、機械学習の代表的な手法の一つであるEMアルゴリズムを用いた.道後温泉本館周辺を対象に,旧土地台帳と付属図という近代史料をモデル推定可能な形式に変換する方法提案を行い,集積や継承,撤退といった近代地方都市の土地所有の変容の実態解析が可能なデータベース構築に成功した.さらに,非集計分析と提案したモデルを用いてパラメータ推定を行うことで,近代地方都市の地主の土地所有形態の選択に異質性があり,時間の経過とともに地租や立地条件といった要因が土地所有形態の選択に及ぼす影響が大きく変容していることを統計的に示すことができた.

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© 日本都市計画学会
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